SS_対少年メモリー

□第三話
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~アドニスpart~

部屋へ入ると、カルロは真っ先にベッドへ駆け込み、座る。
僕は荷物を部屋の隅に置くと、ソファへ座った。
「疲れたあ…こんなに歩いたのは久しぶりかもしれない。」
「確かにつかれましたね。」
カルロは立ち上がると、僕の隣に座りテレビのリモコンを取った。
テレビをつけると、この時間にはニュースがやっていた。
カルロは顔を顰めると、テレビを消す。
また二人の間に無音の空気が流れた。
「どうして消してしまったんですか?」
僕は真っ黒なテレビを見ながら言った。
「もしかしたら前の僕らの家が報道されてるかもしれない。だとしたら嫌だ。あの家のことはあまり思い出したくない。」
カルロを見ると、彼は俯いていた。
僕はなんだか悪いことを言ってしまった気がして、すみませんと謝る。
「何度も言うようだけれど、君が謝ることじゃない。僕の、僕の父さんと僕の話だからさ。」
カルロはこっちを向き、困ったように笑った。
僕は唖然とカルロの顔を見つめる。
「そんなことより、今日もうちょっと町を見て回るのと明日いっぱい見るのどっちがいい?」
「あ、えと、僕はどっちでも構わないんですが…今日は疲れたので、休んだ方がいいですね。」
カルロはそっかと言い、そうだねと言った。
ソファから立ち上がり、フラフラとベッドへ近付くと今度はベッドへダイブした。
「明日にしよう…疲れたし。」
「はい。」
カルロは枕に顔をこすり付けると動かなくなった。
置いてあった時計を見ると5時半頃で、晩御飯に呼ばれる時間になったら起こそう、と僕もソファへ横たわった。
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