SS_対少年メモリー

□第二話
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~少年part~

そのまま街を歩いていくと、カルロは少し小さなお店の中へ入っていった。
僕もあとを続き入ると、可愛らしいものやキラキラしたものがいっぱい置いてあった。
「すごいですね…ここ、いろんなものが置いてます。」
「そうだね。……と、あった。」
カルロが手にしたのは、真っ白な髪ゴムだった。
僕の方を向いてそのゴムと僕を見比べると「やっぱりこれだ」と言った。
カルロはそのままレジへと向かい、先ほどの黒いカードで買い物を済ませるとまたこちらに戻ってきた。
「これ、君にやるよ。明日から付けて。」
「あ…ありがとう、ございます…。」
僕はそのゴムを受け取ると、とりあえず右の手首に通した。
「うん。よし、じゃあ次の街に行こう。」
「え、もう行っちゃうんですか?」
「うん、ここには泊まるところがないからね。」
はぐれないようにと僕はまたカルロの袖を掴むと、カルロの指先がするりと動き僕の指先と絡ませた。
「こっちの方がいい。じゃ、行こう。」
にこりと彼は微笑むと僕の手を引っ張り歩き出した。
また僕は彼についていく。

駅まで着くと、電車に乗る前に僕たちは食べ物を食べることにした。
こんな物しかないけど、とバナナを渡され、僕は丁寧に皮をむいていく。
ほとんど剥き終わり、皮を食べようとすると「ちょ、ちょっと!」とカルロに止められた。
「すみません、何でしょうか?」
「いや、あの、バナナの食べ方知らない?」
「知ってます。僕が皮を食べて、実をカルロさんが食べるんですよね。」
笑顔で実を渡すと、彼はひどく驚いたような顔をしていた。
「すみません、食べ方が汚いとか…?すみません…」
「いや、そうじゃなくて、実も君が食べていいっていうか、皮食べなくていいから。」
カルロは僕から皮を奪うと、身の部分を僕に渡した。
「え、いいんですか?」
「いいんですか?じゃなくて、元々そのつもりだったから。食べて。嫌いなのか?」
「すみません、ありがとうございます…」
僕は口の中にバナナを入れた。
「お、おいひい…」
実の方を食べたのは初めてで、頬が緩んでしまう。
カルロはこんなことで喜ぶ僕を複雑そうな顔で見ていた。
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