dolce vita
□Happy Halloween
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「Trick or Treat!」
「え…っ?」
「トリック・オア・トリート!!!」
「突然、どうしたの?」
「……なんだよ。その反応」
「こっちが訊きたいよ。“ハロウィンに興味なんかなーい!”って言ってたくせに。しかも、仮装まで…」
「気が、変わった」
「だったらさ、ハロウィンイベント行ってくれば?サンドリオンで仮装パーティでしょう?今から行けば間に合…
「パーティーとかそんなん、いいんだよ!俺は、おまえと二人ッ……ああーっ!もう。Trick or Treat!!って言ってんじゃねーか。早くしろよ!!」
「早くって…なぁに?」
「何って、トリック・オア・トリート!って言ったらくれんだろ?アレっ!!キで始まる甘いヤツ」
「あ、キャンディ?」
「はぁー!?ボケてんのか?それか、焦らし?」
「焦らし?わけわかんない。ハロウィンのお菓子が欲しい、って合言葉じゃないの?」
「子供じゃあるまいし…。あ、そ。くれねぇんなら……」
口を尖らせ、悪そうな顔して近づく悠月。
纏った紫のマントをバサッと翻して、それをあたしの頭に被せた。
「…え?えっ?ゆづ…」
「ちょっと黙ってろ」
マントに包まれたまま抱き寄せられ、悠月の心音を聞いている。
ドク、ドク…と耳の奥までそれは煩く響いて速度を速めてゆく。
「そうやって大人しくしてりゃいいの。おまえは、俺の…俺だけのもんだからな」
“お菓子くれなきゃイタズラするぞ!!”
「おまえからキスしねぇんなら、俺からしてやるよ」
「ちょ…っ」
やりたい放題、そこかしこに唇を押し当ててくる。
お菓子をねだる無邪気な子供の様に…
そして、自分の気が済むと
『おまえが菓子寄越さねぇからイタズラしてやった』 なんて言いながら、また意地悪く微笑んだ……。
(2015.10.31)