dolce vita

□月
1ページ/1ページ






手をつないで、ふたりで歩いた。





あの懐かしい月の晩。





君はいつも僕の左隣。





ぎゅっ、と握り返す白く長い指が愛らしくて…









『ねぇ、今夜のお月さま、すっごくキレイだね』



『そうだな』








大した言葉なんて交わさなくても通じ合っていた。






見上げた空から満天の星が降りる。










僕の傍を強い風が掠めて、ふっと一瞬、君の手が離れた…






『あ…』





だけど君はまた僕の手を取って、暖めるように顔を寄せる。









僕の冷たい温もりが、アスファルトに滲んでゆく。





見つめる君の瞳が哀しげに潤む…














遠くで赤い月が揺れていた───














愛しい君。





君はいま、このキレイな月を誰と見上げているのだろう。





僕はずっとここに居るから…





ずっとずっと、君を想っている──。











満天の星空に、ひとつまた星が輝いた……。





(2015.9.27 rewrote)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ