dolce vita
□月
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手をつないで、ふたりで歩いた。
あの懐かしい月の晩。
君はいつも僕の左隣。
ぎゅっ、と握り返す白く長い指が愛らしくて…
『ねぇ、今夜のお月さま、すっごくキレイだね』
『そうだな』
大した言葉なんて交わさなくても通じ合っていた。
見上げた空から満天の星が降りる。
僕の傍を強い風が掠めて、ふっと一瞬、君の手が離れた…
『あ…』
だけど君はまた僕の手を取って、暖めるように顔を寄せる。
僕の冷たい温もりが、アスファルトに滲んでゆく。
見つめる君の瞳が哀しげに潤む…
遠くで赤い月が揺れていた───
愛しい君。
君はいま、このキレイな月を誰と見上げているのだろう。
僕はずっとここに居るから…
ずっとずっと、君を想っている──。
満天の星空に、ひとつまた星が輝いた……。
(2015.9.27 rewrote)