05/23の日記

04:19
長編連載
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【クリスマス×カラー×フィッシュ】

霧に覆われた街、元紐育、現在ヘルサレズム・ロット。
そこは三年前、災厄によりすべての常識を覆した土地。
ほかの土地から隔離されるように一変した。
けれど、いま、どの世界よりも、美しく、そして賑やかに生きている街だ。
そして、当然のように突然の死が訪れる街でもある。
きっとそれは千差万別の印象を持つだろう。

ある人たちは奇跡の街と呼び、ある者たちはこれからの世界の命運を左右する何かが起こる街と称した。


確かに、世界の地下で蠢く仄暗い者たちが集まりだす街。
そして、賑やかできらびやかな、すこし退廃的な印象を残す、街。




貴方には、この世界は、どう写るのだろう?







ぷぁー
ぱぱー

どんどん
ガンガン


ぎぎぎぎ
ゴゴゴゴゴゴ


たくさんの音が支配する午前を乗り越え、静かで賑やかさが増し始める午後。
そんな音から隔離された場所、水槽。

ここはある建物の中にある、大きな、大きな水槽のある部屋。
周りにはたくさんの木々や花々が青々と、彩を与え、どこか不思議な空間を生み出している。
そこには、人の姿をなした存在が水中に浮いている。
胎児の様に身体を丸め、じっと静かに瞳を伏せている。
その存在は、首筋にエラがあり、ひじやかかとあたりにはヒレのようなものが突起している。
頭は昆虫のような触覚がでこからぴょこんと出ている。
そんな存在の身体はとても逞しく、筋肉もしっかりついている。
背もそこそこあるのだろう、大きな水槽の幅がちょうどよく見えているほどである。


異質なその存在には名がある。


ツェッド・オブライエン。
彼は魚の身体を与えられた、造られた存在だ。
しかし彼にも命があり、生きていくすべをもっている。


このヘルサレムズ・ロットでは何かしらの渡り歩くための力が必要だ。
理由はさまざまだが、危険が隣り合わせな世界であるのには違いない。
それぞれがそのための術を持って生きているのがこの街に住む者たちだ。
馴染めなければ、その命を失うし、街から出て行くことになる。
まず、この街に入るためにもいろいろと手続きが必要なのが現状だが。



静かだった水槽のある部屋の隣から、賑やかな音が聞こえ始める。
外は朝日が覗いたばかりの時刻、それにしては少しばかり騒がしい物音である。
しかし水中にいるツェッドからすれば大したものではないため、彼の耳には届かない。


「……! ……!?」
「………?! ……!!」


だんだんと賑やかさに拍車がかかり始めたのか、ツェッドの部屋にもその音が及び始めている。
さすがに彼もピクリと反応し、身じろぎし、硬く閉ざしていた目元がうっすらと開かれた。

「……」

顔をすこし上げ、ぼおっと何か考えはするが、その賑やかさの意味を理解すれば一度息をつけば再び目を閉じる。
こぽ、と口元から空気質な泡が水面へ上がっていく。
定期的に作動している空気を送る機械から出る泡とはすこし違うそれは、彼の息を含んでいた。

その泡から出た言葉は。


「…またですか」


いつもどおりを示唆する、なんの気なしの言葉だった。










ヘルサレムズ・ロットにはその異質さからさまざまな事件や暴動、喧騒が絶えないのが常である。
ここでの治安維持は根絶という言葉を知らず、必ずどこかで何かが起こる。
しかも異界の中心区である、さまざまな種族の存在が暴れまわられていれば危機的なことも起こるわけである。
警察も常識で考えられる存在とは違い、武装に武装を重ねられているが機能としては外の世界とは大して代わりがないのが難点である。

そんな甘い治安維持機関では手が足りず、いつからか一定の均衡を保つために暗躍する秘密結社の存在が噂されるようになった。

その名を、ライブラ。

一般人に扮した構成員がいるだとか、超人的な力をもった者たちがいるだとか、噂はうわさを呼ぶ。
しかしそれは存在している。どこかで世界の危機に瀕すれば何処からともなく現れ、収束へ導いてゆく。
それを見ている者達が確かに存在しているのである。


わりとあちこちで見かけられているのが現状だとか、なんとか。
この街にいなければ遭遇すら出来ない、そんな日常だ。

つづく…



あとがき
夢主の存在がない血界戦線オリジナル小説です。
主役をツェッドに絞ったシリアスも交えた季節はずれなクリスマスを舞台にした物語です。
完成後ピクシブに移動させます。
来週のツェッドくん登場回までには完成させる方向です。
がんばれわたし。
オリジナル小説なので何処に置こうかなと考えた末あんまり使わないここに決めました。
完成したら撤去します。しばらくたのしんでやってください。

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