企画展示室
□お題募集企画セカンドシーズン
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世界は糸で満ちている。
それはヒトを繋ぐものだったり、それはヒトを縛るものだったり。
いろんな色の糸も、意図もあるけれど、特殊なものがひとつだけある。
運命をつかさどるあかいいと。
それは恋愛だけではなく、相棒や、信頼を表すソレであったり。
互いの関係性を濃く表す、一番のものだ。
「あかいいとってさ、赤なのかな?」
「さあ?」
お互いテーブルを挟んだ状態で始まった問答は、私自身の能力によりもたらされた存在の考察へとシフトした。
テーブルには食後のデザートと称した大きなパフェ。レオナルドのほうにはコーヒーとショートケーキのセットだ。
あたしはすこし大きめの先割れスプーンで、がっがっとパフェを掘り進めながら、ひょいぱくひょいぱく口に運びながら言えば、ショートケーキを丁寧に切り分ける彼はこちらに視線を送り、首をかしげた。
「ほら、日本ではあかってこう、銅(あか)、とか淦(あか)とかいうのよ」
メモ用紙にさらさらと英語の読み方でそれらを書き表せば、赤(red)とは違うのは明らかだ。
それに納得したのかレオナルドは意外そうに声を上げた。
「へぇー。そう考えたら色合いとしては印象が変わるなー」
「でしょう? んで、アタシがみえてるあかいいとは二種類あるわけよ」
「こないだザップさんと話してた、考え合っての意思でのつながりの意図、と実際の関係性である糸だっけ?」
「そそ。ぶっちゃけ意図のほうが色の赤で、関係性は大体ゆるぎないものだから銅を表す銅(あか)って見え方してるのよ。けど、それってめんどくさくない?」
「そういう能力からの見え方、ってことなんだからクレームつけるのはちょっとお門違いな気がするけどなぁー。あ、そのクッキー頂戴」
「ん、ほら。」
「ぁむ。ん〜っ、美味しいっ」
「んでもさ、たまにこの能力不便だしめんどくさいなーって思うんだよねー」
「ほら、ノーナがめんどくさいかrっぃって」
「なんか言ったかよ? あ"あ"ん?」
「ごふぇんっふぇっ、はやはふははっっ」(ごめんって、あやまるからっ)
「わかりゃいいのだ。わかりゃあ」
「そういうとこ、ザップさんににてるよなぁ」
ボソリとつぶやいたつもりだろうが聞こえてるんだぞ、この陰毛頭め。と脳内で締め上げてやった。
へっ、ざまぁみろ。とほくそ笑んでいれば、ならさ、とレオナルドはこちらをじいっと見てくる。
「ん? なに?」
「僕らの関係性は何色なのかなーって」
「っふぇっふっげほっげほっ…」
むせた。そう、盛大に。
「……今までいっちどもノーナは触れてこなかったから、僕もあえては聞かなかったけどさ。この際だから聞いておきたくなった」
「まだ理由きいてない」
「絶対聞かずにスルーするに100ドル」
「どんだけ信用ないんだよ! つーかそれ安いん?! 高いん?!」
「で、実際のとこ、どうなの?」
「レオナルド。お前あたしに言及するの上手くなったな、おい」
「今日の昼飯代出したのはだれだったっけなー」
「お前おごりだって言ったろ?!」
「そこに少しも一応社交辞令でも足そうか?って言葉もなかったしなぁー」
「…お前、番頭並みに腹黒くなってきてるよね」
「で? ど う な の ?」
聞かれれば、あたしは言葉に詰まり、ぅぐ、とスプーンにのったクリームを押し込む。
くそ、甘い。してやられた、という言葉を飲み込んで、飲み下してしまいたくなる
今日はやけに食いついてきたのは、この話を今日しようと踏んでいたからだとすれば、ほんっとうに性格わるいし、考えてみればいつもはダイナーなのにあまり行かない店だったのも考えに至れば。
こ い つ 、 き づ い て る な ?
うっわ、性格悪い。こいつ純粋培養かと思ったらわりとシスコンだし、根性あるし。図太いし。
「…はー…。応えないとダメ?」
「財布ないのわかってて言うけど、答えなかったらここノーナのお勘定ね」
「鬼畜かっ」
「さっさと答える」
「むー…」
【赤らむ頬とあかいいと】
(ほんっと、性格悪くなったよねぇ、レオナルド…)
(知ってる。一応言っておくけど、俺は好きだから)
(うわ、さらっと言いやがったな?!)
(はい、早く答えて)
(逃げ場ねえじゃねえかよおおお!!!)