企画展示室
□お題募集企画セカンドシーズン
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「今日は、異界側なんですね、先生」
「すこし、身体に負荷がかかる可能性はあるから、しばらくの間は隔離個室のほうへ移ることになるよ」
「そう、ですか」
わたしは、病院が大崩落の被害にあった中の稀少な生き残りだ。
何故生きていたのか、いまだに解明されていないというのもあり、院長のマグラ・ド・グラナ先生や、ルシアナ・エステヴェス先生の管理の下生活している。
病院の名は、元ブラッドベリ総合病院。
つい先日、この病院をめちゃめちゃにした張本犬が来襲し、一時はどうなるかと思われた。
しかし牙狩りと呼ばれる人々と、ルシアナ先生のおかげで、三年間燻り続けていた過去の遺産に決着がついた。
遠目で眺めていたけれど、それは、とてもすごかった。
何が凄いって、患者として入院した牙狩りの仲間が啖呵を切ったのがきっかけだったのが凄い。
そうして平和が訪れてから二週間、病院は異界のほうにも患者が居るため一旦霧の奥に浸霧することとなった。
「リタ。こないだ逃げなかっただろう」
小さいルシアナ先生が私の荷物をまとめてくれながら何の気なしに聞いてきた。
「アイツが、先生達に制裁されるのが、見たくて」
「ばか、何かあったらどうするんだ」
「先生が一番わたしのこと分かってるでしょ? 私は死ねない身体って」
「それでも、だよ。ソレがなければ、君は普通の女の子なのだから」
少ない荷物をまとめてくれた先生は、私の乗っている車椅子を押してくれる。
まとめた荷物は私の通学かばんの中におさまっている。
それを膝の上におけば、病室の外に出た。
「その時点で、私はフツウのオンナノコじゃないと思うの。先生だってそうじゃない」
「わたしは、ああでもしないと君や他の患者を救うことが出来なかった。後悔はしていないよ」
押されながら廊下でたまにすれ違うのは異界存在の患者さんたちだ。
私をしっている者もいれば、すこしものめずらしそうに振り返るのもいる。
「私は、先生みたいに、人を救うことも出来なかった。」
「けれど、誰よりも早く、完治した。コレは医学的にも凄いことだ」
「…そうだけど、いまだにその仕組みは分からないままじゃないの」
押してくれているルシアナ先生を振り返れば、困ったような表情をしていた。
「…それでも、リタ、君はまだ生きている」
「そう、ね」
【サナトリウム】