企画展示室

□お題募集企画セカンドシーズン
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強いヒトが好きだ。
優しい人も、好きだ。
だからといって、カリスマ性があってほしいわけではないし、強面がいいと言うわけでもない。

ただ、好きになったのは、とてもイケメンでまぶしいってだけ。




「面会させてください」

「だーめーだ」



本日も私ノーナ・ガルセシアは獄長アリス様と対峙しました。
また却下されました。
唯単に大好きなヒトに面会しにきただけなのに。


「どうしても?」

「ラインヘルツのように力ずくというなら、受けてたつが?」

「…52回負けてるからなぁ…。アリスちゃん強くない?」

「ちゃん付けで呼ぶな」



こう、毎日顔を合わせていれば、なんだか親しくなった気になってしまう。
そして話す回数も増えているわけだから。


「…むぅ、アリス獄長のいけずー」

「意地悪で結構だ。」

「…はい、これ監獄の看守さんも含めて一緒にどうぞ」

「また手作りの弁当か?」

「どーせあの二人には渡してくれないんでしょう?」

「当たり前だ」

「じゃあ食べてくださいー。卵は塩味と味なしとだしまきと砂糖入りがそれぞれわけてありますからー」



大きな大きな弁当の包みを置き、ため息を吐く。
そうすれば奥の部屋からアリス獄長は片付けられた弁当箱を持ってきた。
結構重たいはずなのだけれど、軽々だ。
すっげえや。


「先日の分だ」

「…綺麗に平らげてやがるぜ…」

「男所帯だからな」

「悔しいけどうれしい…。ん、なんです?このメモ」


弁当箱の下からこそっと覗くメモを確認すれば、次の模範囚人訪問先の予定スケジュールである。
一瞬我が目を疑い、何度か瞬きをした。
食い入るようにメモも見た。
本物である。最後の文末にはご丁寧に獄長の大きなはんこで印まで。
これいいの?という期待をこめた視線を送れば、しらばっくれたような顔ではよ帰れと言いたげに手のひらでしっしっとしている。
耳元が赤い。なにこれ、ツンデレなの?とニヤニヤは抑えられないが、口元の緩みを抑えながら弁当箱を両手で抱えた。



「まぁ、なんだ。いつも旨い飯を横取りするのは、気が退ける」



ソレを餌付けって言うんですYO!とは口が裂けてもいえなかった。
言えば出禁をくらいそうな気がしてならない。絶対そうなる。ツンデレの機嫌損ねたら大変なことになるのはよく知ってる。…知ってる。








予定スケジュールを確認すれば、同行にクラウスさんの名前。
なんだぁ、喜び損かーと思いはしたが、会えないよりかはぜんぜんマシだ。
いや、むしろアリス獄長の話し相手してくれてるんだろうから、心置きなく交流ができる?!と喜ぶべきかもしれない。
その前に私のジュルスケ調整せにゃならん。これは番頭に直談判せねば。





「というわけで同行していいでしょうか」

「…それで許可出せると思ってんのか。お前」

「デッスヨネー」



おでこに不許可のはんこまで押されて、数日消えずにザップやレオナルド、果てはチェインにまで笑われた。
擁護してくれたのはクラウスさんとギルベルトさんとツェッド…いや、ヤツは笑いを抑えていたからザップ達と同罪だ。あの血法弟子んズめ。
今度お師匠様に文句言わないと。あ、吊るされそうだわ。


ならば無理やりにでも行ってやるんだという意気込みで雑務をいつも以上にテキパキバタバタとこなし、事務処理作業も残業してまでがんばった。
もちろん、抜かりは無い。外出日に有給休暇をとるためだ。

そうして向えた当日。前日にやるべき仕事はきっちりこなしたおかげもあってか、眉間に皺をいくつか増やした番頭氏から有給許可をいただいて。






私はその日熱を出した。








「もおおお、やだぁああ…。」


原因は普段やらない意気込みで仕事をしていたせいだ。
徹夜した日もあったせいもあって疲れと知恵熱がどっと出た。
この一週間のがんばりは、この休みのためだったはずなのに。
どうしてこうなった。


ふわふわする頭、くそ熱い頭。
動けない身体。
先ほどチェインが看病に来てくれた。
がんばってた、とねぎらってもくれた。だがテメーが不許可ハンコを笑ったのを許すつもりはねえとうわごとのように伝えたら、シュンとしてわるかった。ごめん。と謝った。
アイスが欲しいと言ったら凄い勢いで消えた。

枕元には先ほどチェインに食べさせてもらって空になったアイスの入れ物。

クラウスさんに呼ばれたらしく大急ぎで出かけていったところである。


「…ぶろーでぃ…はまぁ…」


ぼろぼろと泣きながら会いたかったヒトの名を呼ぶ。
久しぶりに会えると思ったのに。
話が出来ると、馬鹿できると思ってたのに。
悔しくて、自分のキャパの少なさに呆れて、嫌になった。



「一目、会えたら…。ぐす…」




ドタドタドタドタ



そこへなにやら賑やかな足音が聞こえてきた。
言い合っている声も。
しばらく聞いていないすこし高い声と、ふざけたようなしゃがれ声。

バタム


扉を開けて私の部屋に入ってきて、視界の中に褐色肌のイケメンと、赤い顔が。


「よお! 元気かい?」

「嬢ちゃん、バカみてーに仕事してハマーと会える機会棒に振ったんだってな! 笑いに来てやったぜ!」


その手には、言葉に似合わぬ控えめだけれど色鮮やかで、花が一輪ずつ混ぜられている花束。
これは夢だろうか…? 私は死ぬのだろうか…?とかいろいろ脳裏をよぎった。



【カラフルなお見舞い】


(うわーーーーん!)


(ドグが泣かせた!)
(ええーデルドロだろ?!)
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