企画展示室

□お題募集企画セカンドシーズン
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どうも皆さん。ノーナです。
夏なのに風邪を引きました。
のどや身体がとても痛くて、目が覚めてしばらくは動けませんでした。
声も出なくてとても困りました。

(どうしよう、携帯も机の上だし…あ。頭も痛いな…どうしよう)


脳内も上手くまわらずパニック状態。
何も出来ないまま数時間、結局瞼を閉じて眠るしかなかったのです。


気がついたらおでこがすこしひんやりとして、汗ばんでいた身体もいつの間にかすっきりしていました。


ぼんやりしていた視界が鮮明になれば、それが自室でないことが分かりました。
いつも見ているおしゃれな天井。

(夢…? ライブラの事務所よね、ここ)

風邪をひいた状態でこんなとこまでこれるはずも無いわけです。
夢だと思うのも当たり前です。
けれど視界ははっきりとしています。


「ん"…」

のどから吐いて出た声は、のどの潤っていない声色で、自分でも驚くほど。
視線を横に向ければ、飲み物らしきコップが置いてあった。




ガチャリ



扉の開く音がして、こちらに向かってくる足音。


「気がつかれましたか、ノーナさん」


その声は穏やかで、優しく、落ち着きのある声。
ギルベルトさんだ。


視界の範疇に入ってきたのは紛れも無いライブラのリーダーに仕える老執事、ギルベルトさんです。


(夢じゃ、ない…)


やっと人の存在をしっかり捉えられて安心してしまったせいか、身体のだるさがすこしぶり返してきました。
ああ、情けない。



息をするのも、しんどい。

「…はぁ、はっ…」


視線で彼を追ったのがわかったのか、ギルベルトさんはすこし困ったように笑います。


「その様子ですと、まだ声は出せないみたいですね」

しゃべりながらも新しいタオルに水を浸し、それを絞っています。
そして綺麗にたたみ、私のおでこに乗せられているすこし熱くなったものと交換してくれれば、おでこの熱が一瞬引き、すっとしました。

その表情を見たのか、ほっと顔をほころばせたのがわかります。


彼の問いにうっすらとうなづけば、空いた手で髪をすくように撫でてくれます。
とても優しい手つきで、ふわふわと浮いているような感覚になってへにゃ、と笑えば驚いた表情をしました。



「気がついて、本当によかった」



髪をすく手は頬をなぞり、あごを掬い、唇に指を這わせれば、背中がぞくりとしびれた。


「んっ…」


風邪とは違う感覚に、一瞬ひるんだ声があがってしまう。


「ノーナ! 大丈夫かね」

「…坊ちゃま、それに、スターフェイズ氏」



振り返る前に、ギルベルトさんがなぜか眉をひそめたようにも見えた。
気のせいかもしれないけれど。


「まだ、お話ができない状態のようです。もうしばらく薬を飲んで安静にするのが一番かと思われます」



まるで、早く部屋から出るようにと言いたげにも、聞こえたのは気のせいだとは思う。



【ある組織の人間方程式】


(体よく追い払われてしまったな、クラウス)
(近頃、露骨になったようにも感じているのだが…)
(クラウスが気づいているって事は、よっぽどだなぁ。ギルベルトさんが三歩リードってとこか)
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