企画展示室

□お題募集企画
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「どおして!? そこまでしてっ、なんで!」
「済まない」

クラウスさんは小さく笑っていた。
その笑顔に、見覚えがあった。そうだ、あの時も、彼は同じ笑みを浮かべた。
そのときは少し恥ずかしくて、そんで、そんでもって。


「クラウスさんの、ばかっ」


あふれる涙は、きっと、うれしいのと、悔しいのと、切ないのと。
幸せって、こういうことなのかな。文和。
一瞬、風が吹いたように感じた。涙でにじむ視界を、強引にぬぐって【つま先を二回打ちつけた】。

「ノーナ!?」
「ひとりだけ、ヒーローになろうったって、そうは行かないんですからね」


袖を二の腕まで捲り上げて、髪を乱暴に纏め上げた。
ああ、あたしはこんなに髪が伸びたんだ。変われた、のかな。
きっとまだ結論は出ていない。まだ、出す必要はないんだ。急がなくても、焦らなくてもよかった。
だって、この人はいつでも半歩前で待っててくれて、大きな手を差し出してくれていたんだから。
やっと、あたしはそのことに気づけた。どんな運命であろうとも、あたしはあの堕落王を恨むことはしないだろう。
彼がきっかけをくれたんだ、出会うべくして出会えたんだ。


そう思えば、まっすぐ前を向けられた。
もう迷うことはない、迷っても、きっと自分で、みんなで、突破していけばいい。
頼ってよかったんだ、信じてよかったんだ。

こつ、こつ

そして、もう【二回打ち付ける】。

「拓け、大地」

噴出す己の血が、足を覆っていく。
あたしの存在は、これだけでよかった。
いまはどうだろう、そうではないよね。

「憤れ、土睡蓮」


カツ


一歩踏み出す、クラウスさんの横に並び、構えの体制をとった。
守られるだけが、あたしじゃない。それは昔も、今も、変わらない。変えない。
それが、あたしだ。誰にも折ることなんて、させない。


「【耕す】【お手伝い】をします」
「ノーナ、それが君の出した答えか」
「ええ、全部、受け入れます。それは、みんなが教えてくれたことだから。そして」


眼前に据えた、かつての恩人に不敵な笑みを見せてやる。


「ミスタークラウス、あなたがあたしにくれたもの全部に誓って、生きて見せます」


息を吸い、吐き出す。もう、だいじょうぶだ。
文和、あなたを、あたしは止めてみせる。今の実力、みせてあげる。


『ノーナ、腹は決まったようだね』
「ええ、カズ兄。お相手願っていいかな?」
『もちろんだとも。さあ、やろうじゃないか』



【居場所】


(クラウスさん)
(うん?)
(これが終わったら告白して良いですか)
(!?)
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