企画展示室

□お題募集企画
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リタはライブラに所属する幼女だ。
見た目は愛らしく、人形のような姿をしているが、普段はじゃじゃ馬もいいところ、暴れ馬でよくザップとつかみ合いの喧嘩をしているほどである。
大体ソレをとめているのは、ギルベルトか、ツェッドのふたりである。

しかし彼女も、曲がりなりにもライブラ構成員、能力もちである。
その力は、一度変身をしないと発動できない。
変身といっても、大人の姿へ変化することなのだが、…今回の物語ではあまり触れることはないだろう。


リタ・アンジョルノ、それが彼女の名前。
父親と母親はライブラに世話になりがちなちょっとわけありなVIPだが、コレでもかと言うほどの守銭奴である。
あこぎな商売はしないが、わりとカツカツな運営をしている。溜め込んだお金は定期的にボーナスで振舞われるため、社員からの不平は少ない。
しかし、守銭奴で、社員はその話題になると苦笑いを浮かべるくらいには。





こんこん




水槽で眠っているところを、ツェッドはガラスを叩く音で眼を覚ました。
その叩き方はとても弱く、しかし呼ぶ気はある音。
リタの呼び出しである。


「こんにちは、ツェッドさん」

「ん…んぅ、おはようございます。リタ」

「もうお昼よ? ご飯も食べずにずうっと寝てるだなんて、昨日なにをしてたの?」


まったくもーとぷんすか腹を立てているらしい彼女に、ツェッドは首をかしげた。
どうしてこの小さな先輩は腹を立てているのだろうか、と。


「ちょっと? 聞いてるの?」
「あ、いえ。なぜそんなに怒っているのですか?」


「質問に質問で返すなんて! いいわ! 応えてあげる!」


どういう流れでそうなるのだろう、と再度疑問に思いはするが、彼女の突拍子の無さは大分わかってきていた。
なので静かに彼女の言葉の続きに耳を傾けることにしたのだ。


「一緒にご飯を食べに行きましょうってことよ? ツェッドさん」

「本当に突然ですね!」


さすがに突っ込まざる得ない。


「それなのに貴方ったら、いつまでもお水の中でぶくぶく寝てるのだもの。起きるのを待ってたけれど、痺れを切らしちゃったわ」

「それは、申し訳ない。昨日はレオくんたちとトランプに勤しんでたもので…」

「な、な、なんですって!? そういう楽しそうなことにワタシを誘わないなんて、どうかしてるわ!」

「いや、時間遅いですし。リタは寝ないといけない時間でしょう?」


そう返せば、彼女はぐうう、と言葉に詰まったようだ。
そんなことより!とまた無理やり話を動かす。

めげないなぁ、この子。と時折思う。


「だからっ、お昼ごはん、一緒に行きましょうよ!」



わっ、と笑顔になる。ころころと変わる表情は、まるでさいころみたいだ。
そのあたりで、やっと寝ぼけていた思考がはっきりしてきて、少し外に出ようか、という気分にもなった。
なにより、おなかがすいている。


「そうですね、行きましょうか」



そう返せば、やったぁー!と両手をあげて喜ぶすがた。
なんだか、ほほえましい気持ちになるのが、わかった。








「ねえねえ、ツェッドさん」
「なんでしょうか?」


がつがつとカレーを掻き込みながら、リタは不思議そうにこちらを見ている。
すこし首を傾げてみれば、彼女は空いた手でこちらに触れようと伸ばしている。
どうしたというのだろうか?


「む…むー。その、触覚、触ってみたいなぁっていまなんとなく思ったんだけど、やっぱり無理ね。」

「これ、ですか?」


自分の額に二本ついた触角らしきものを爪先で軽く触ってみる。
確かに、人間型にはついていないし、気にはなるのだろうか。


「大人に変身すれば届くのだろうけれど、それじゃあ意味が無いのよね…」

「どういうことですか?」

「うーん…ううん。なんでもないの。えへへ」



少し考えるが、最後はごまかすように笑う彼女。
まだまだわたしも子供ねーとぼやきながら水の入ったコップを持ち上げた。

と、


つるっ


「あっ」


しゅ



落ちかけたグラスを、とっさに手を伸ばし受け止める。
割れたら大変だ。


「おお…。おおー…」
「気をつけてくださいね?」


感心するようにうなづく彼女に、釘を刺せば、困ったように眉をひそめて、ごめんなさい。と謝る。

「それにしても、ツェッドさんは手が長いねぇ」

いいなぁ、大人。といわれれば、そうでもないですよ?と返す。


「身体は確かに、大人とか、大きいとかですけど。中身はまだまだ」
「身長高いからいいじゃない」
「そーゆー話じゃない気がしますよー」


そうかなぁ、と今度は彼女が首をかしげる番になったのだった



【届かない】



(もっとおっきくなったら、届くようになるのかな)
(なるかもしれませんね。)


(そういう意味じゃ、ないんだけどなぁ…)
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