企画展示室

□お題募集企画セカンドシーズン
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「好きですっていえたらさ、絶対いまこうやって悩んでないわけよ」
「そうだなぁ」
「そんで、言える勇気があったらこうやってあんたみたいなお仕事で、女を軽く口説けるヤツのとこに来ないわけよ」
「今日はやけに荒れてるねぇ…ノーナ」
「でな? ここに指輪まで用意したわけだよ」
「…うん? どういうことだい?」
「つまり、結婚を前提に付き合ってくださいってことだよ!」
「俺か?!」
「お前だよ!」






「ってやりとりを先日見事完遂しました、警部補」
「あほなのか、お前ら」


数日前の割とわかりやすいやりとりをそのまま職場の上司に雑談ついでに報告すれば、いつもどおりの三白眼で呆れた顔をされてしまった。
失敬な!

さすがに相手がライブラの人間だなんて口が裂けてもいえないし、相手がそのライブラの参謀だなんてバレた日には、大手柄かもしれないが懲戒免職もんだ。
あんま考えたくない。考えるのやめたい。

「あほじゃないです! タラシとバカが付き合うことになっただけです!」
「それをアホと形容せずしてなんとするんだ! このアホ部下が!」
「ああ?! またアホって言ったぁああ! アホって言った人がアホなんですー」
「ガキかよ!? いい年した大人が、なにやってんだ、まったく・・・。つーか、普通そういうプロポーズなんざ男からするもんだろが」
「相手の好意に気がつかないヤツなのであてになりませんでした!」
「あー、そりゃダメだな。お前からで正解だわ。」

でしょー!と返せばまた叩かれる。
なんでだ、このクソ上司め!そんなんだから昇進できないんだぞ!とは言わない。

長い付き合いなのでそこまで言えばこのやる気のなさげな、意外とやり手の上司のへそを曲げてしまうのは分かっている。
なんで昇進できないのか、その理由も一緒に仕事をするうちになんとなーくだが、察するようにはなった。
本人が、現状それでいいのだろうから、これ以上の応援をする必要も、ないだろう。
だから、そこの話には触れないのがお互いの幸せと言うものだ。


「そんで? その察しの悪い天然タラシはどういう仕事をしてるんだ?」
「あ、まだその話続けます?」
「相手が好意に気づいていないのに完璧なるエスコートだとかやらかすんだろ? さぞかしいい仕事してんだろーよ」
「いろんなオンナノヒトにそういう接待をしてるみたいですけどね!」
「いろいろと問題ありすぎじゃねえの?! お前それでいいのかよ!?」
「利害は一致してるのでオールオッケーなのです!」


そりゃ、好きだけどさ!とは内心にとどめておくにしろ、その日の警部補はやけに不機嫌だったのは確かだったのであった。


【共犯者と気づかぬ上司と部下の構図】


(っつーか、結果的に失恋してるじゃねーか、俺。これ)
(え? なんか言いましたー?)
(なんでもねーよ)
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