企画展示室

□お題募集企画セカンドシーズン
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話が出来たのはよかったけれど、もともと別の用事がメインとのことで、その用事を済ませにいくことになった。
なにこれつらい。
って思っていれば、移動しながらの会話ー!
スターフェイズさんはものすごく日本語が上手い。驚いた。
有名なトコの言語は大体できるらしく、なにこのパーペキな人初めて見た、って思った。


【しゅうまつがやってくる】ー2−


用事と言うのは、糸目の少年、レオナルドくんと、目つきの悪い褐色男、ザップさんの昼ごはんになるハンバーガーの購入。
そしてスターフェイズさんはサブウェイのサンドイッチがほしかったらしくそちらにもよることに。


「こっちの世界にもサブウェイあるんですねー」

「まぁ、根本的に地球だし、発達レベルも同じなんだろう? ならあるだろう」

「すっげー大雑把ですね。スターフェイズさんって」

「そうでもないが、あるという事実が大事だろう」

「あ、スターフェイズさんめちゃくちゃサブウェイ好きなんですね」



そう彼に言えば、ぴ、と姿勢を正して前を向いた。
あ、すっげーすきなひとだわこれ。
なんとなく高級嗜好っぽいなーと思っていたけれど、意外と庶民のファストフードが好きらしい。
金持ちそうな臭いはすごくします。本当に。
そうして用事が終われば、出入りのための門まで来てしまった。


「あ。」

「ひとつ提案なのだが」


門の前で、スターフェイズさんに引き合わせてくれた刑事さん、もとい、警部補のダニエルさんが待ち構えているのが見えた。
スターフェイズさんはそれを視界に捉えながらこちらに声をかけた。


「これを、使ってみないか?」


差し出してきたのは、細いチェーンに小さいさいころのような金属のペンダントトップが吊ってあるもの。
とりあえず、両手で受け取ってスターフェイズさんに視線を送った。


「これは?」
「まだ試作段階なんだけれどね。翻訳機能のついたペンダントだ」


まあ、かけてごらんよ。といわれたのでためしに首からかけてみる。
重たくなく、見栄えが悪いわけでもない。
機械という感じもせず、おしゃれでもつけていられそうなデザインに、おお、とつい声が出た。


「いいですね。これ。かわいい」

「ああ。どんな服にでも似合うようには作らせたからね。あとは翻訳機能だけか」

「待ってください、これ、特注なんですか?」


さらっとオーダーメイドで一品ものといわれて、あ、やっぱ金持ちだわ、と思いつつ身元も分からないようなやつにこんな高価なものを与えていいのかと疑問に思った。
だから聞いてみれば、そりゃそうさ、不便だろう?といわれてしまえば、ぐうの音も出なくなった。


「そのぶん、しっかり働いてもらうよ」

「ちょっ…、わたしなんの能力もないんですよ?」


この秘密結社ライブラで働いている人々は、何かしら秀でた能力を持って活動している。
暴れている姿も見てきたのもあって、どうしてそんなところに私はいるのだろうか、と思わないときはなかった。
このスターフェイズさんだって、氷を使う能力者。割と抜け目の無い強かな人物なのは、見ているだけでも理解できた。
そしてそれぞれが仲がよく、信頼し合っているということも。


「ある」


彼は即答した。


「君には、理解できないという、能力がある」

「どういう…」

「別世界から飛んできたという人間は、稀少だが存在するんだ。そしてそれによる研究データもね」

「えっ、と」


スターフェイズさんは胸ポケットから一枚の折りたたんだ紙を取出し、わたしに差し出した。
受け取り、開いてみればそこには過去の異空間渡航者一覧と書かれたデータが載っている。
一時は終末かと云われた大崩落前から、その事例は存在し、この区域の外に居るわけのわからない者、異界存在とは違う、人間のトリップ事例が簡易だが記載されているのだ。
その数は多くは無いが、少ないわけでもなく、そしてそのどれもが異能があるか、ないかの表記が成されていた。
しかし、そのトリップ事例は大崩落以降は焼死体のもの以外はぷつりと途切れていた。


「大崩落後、生きてこの世界にやってきたのは、君が最初と言うわけだ。そして環境の変わった世界の歪みにより、正常な能力とは異なる力を君は得た」

「それが、理解できない、という思考概念能力?」

「君の場合、聴覚からくる情報収集能力の著しい低下、その理解力が落ちている、という能力だ」

「それを補うのが、この機械、と?」

「ま、そういうことだ。周りの雑音に惑わされること無く作業に没頭できるだろう?」

「…もしや、あの山積みの書類整理の手伝いを…?」



嫌な予感はしていたが、ちらりとよぎったスターフェイズさんの仕事部屋の惨状に、ぴんときた。
そうして恐る恐る彼を見れば、とてもいい笑顔をしていた。
あ、これ逃げられないやつ。

その様子に、大きくため息を吐いた。

「帰る手段はないんですよね」

「その研究は既に20年も続いているが、見つかっていない」


その言葉に、わかりました、と伝えればぽんぽんと頭を二回優しく叩かれる。


「じゃ、決まりだな。帰るか!」

「へーい。」

げんなりとしながら門へ向う。
手続きを済ませ、ダニエルさんと合流すれば、こそっとスターフェイズさんが声をかけてきた。

「彼の話が理解できても、受け答えはしなくていい」


後々に理由を聞けば、面倒なことは避けたいということだったが、その本当の意味をしったのは、かなり後の話である。
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