企画展示室

□お題募集企画セカンドシーズン
42ページ/60ページ

世界は嘘つきだ。
何もかも、嘘で塗り固めて、誰も真実をしらない。


【しゅうまつがやってくる】ー1−



毎日毎日飽きもせずこの街は実に賑やかである。


「むしろ何も起こんないほうが不思議なくらいよねー」


がっがっとかきこむ牛丼の味はとてもチープな安物といったもの。
だがソレがすきだ。
最近やっとこさ人間だけしか入れない区域に日本の牛丼チェーン店が復活した。
話が通じるのはやはりこの区域だけで、外に出れば、またわけのわからん世界だ。


わたしはちょっとインチキ魔術にひっかかって異世界の地球に飛ばされた。
よくわかんないけど、世界がやばかった時期から三年くらいは経っているらしい。
まさに終末だったとか。
あんまり英語は話せないけど、ここでの言語は少しばかりズレが生じている様で、人間だけしか出入りを許されていない地区ではまだ英語に聞こえるが、外に出れば怪文と化す。
英語すら理解が出来ない世界だ。


そう思っていたのもつい最近まで。
近頃は少しばかりわかるようにはなってきたが、矢継ぎ早に言われればやはりわからない。
もう少し交流を増やさねばならないのではないだろうか。



初めていたばしょは、ビルの屋上。
不審者と勘違いされたのか警察らしからぬ警察っぽい組織に連れて行かれた。
しかし言葉が理解できないので話ができない。
結局無害ということだけは分かってもらえたようなので、最初こそ乱暴だったがそこからは優しく対応してくれた。
そうすれば、なにやら見知らぬスーツ姿の男性がやってきて、私の腕をひっつかんだ。
部屋に通したらしい警察のお兄さん?が呆れた顔で何か言っていたが、わからなかった。
どうも、わたしの身元が分からないなら作ればいいと思ったのか知り合いに引き取りにこさせた、ということらしい。
いや、なんかそういう感じかなって。



しばらく強引にひっぱられる日々が続いたが、とりあえず危険な人間ではないのはわかった。
彼の職場らしい事務所には、変わった人々が働いていた。
なんかすごいさわり心地、葛餅みたいなひととか。
いろいろだ。いろいろ。
初対面でじろじろみられて、何か言われているようだったけれど、わからない。
とりあえず、褐色男相手は 何も言わずに居るほうがいいと思った。




「ここなら普通に話せるかい?」



この世界に来て初めて会話が成立したのはそれから二ヶ月もあとの話である。
いろいろと忙しかったり事件があったせいだ。
最初に私を引き取りに来た、頬に傷の優しそうな男の人は変な生物の排除された地区へと私を連れてきた。
入場手続きを済ませて口を開いた彼の声は、実に綺麗な声だった。



「…ふつうに、聞こえます」

「やっぱり、君は日本人か」

「ええ、そうです。やっとお話できましたね」

「お互い何を話しているのか分からなかっただろうしね」




彼の名をスティーブン・A・スターフェイズさん。
大きな声では言えないが、わたしがお世話になっている事務所は秘密結社のアジトだという事実をしった。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ