企画展示室

□お題募集企画セカンドシーズン
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時間稼ぎをするハメになった。
そりゃ、いきがっていた俺がいけなかったのだから、付き合わなければ、不義理だろう。
その辺は気にするほうだ。

二分すればその吸血鬼は分裂をする。
なんだこいつ、さっきと動きが違うどうなってんだ。



「うおおい、ザップ、そっち行ったぞ!!」

「へいへい、やりゃーいいんだろ? エデン」



目配せでどういうことだ、と問えば、知るかと言いたげな不機嫌な口元が返事だった。
くそが、俺が知りたいわ。



「つうか! お前ら牙狩りにしかたおせねーんだろ?! あの吸血鬼共」

「正確には封印だし、それできんの旦那だけだし…」

「実はライブラってあのリーダーいねーとどうにもなんねーんじゃねーか!」

大声の応酬をしていれば、更に相手側の速度が上がる。
こいつ、俺らのたたかい方を見て学習してるのか?
目を細め、つま先の力を軽く、とにかく負担を減らせるように考える。
そうすれば、相手の動きが微弱だが変わった。
こりゃ、ビンゴか。


「お前、しらねーからそんなこといえんだよ! ばーか!」

吐き捨てながらこちらと合流するザップに、俺は呆れ声で返す。

「はあ?!俺が知るわけが無いだろ!? 俺、お前らの仲間じゃねーし!」


まぁ、一度はリーダーじきじきにお声はかかったけどさ、とは口には出さない。
これは、俺の中で認めるわけにはいかない現実だからだ。


「つって、霧側でもねーだろ、実はオメー」


言われれば、ぐ、と言葉には詰まる。
痛む腕、霞みそうな視界、思考だけがまだ元気で、会話だけは成り立つ。
敵側は更にその攻撃度合いが上がっている。
これは、そろそろ、まずいんじゃないかと思いながら更に後退、手当たり次第に投げつけても、今度はもう避けられてばかりだ。


「強いて言うなら、世界の敵になったつもりだ、ったんだがなぁ」


ため息と共に叫んだ言葉は、嘘ではない。


「ほおー、過去形たぁ、おもしれー。」


過去形、ほんと、なんで俺は世界の敵になれると、過信していたんだろうな。
なれる、のかもしれないが、現状の俺には、無理だ。
そんな言葉が頭をよぎり、首を振れば傷が痛んだ。


「じゃかあしいわっ」

誰に向けたというわけではない。
これは、自分が結局保護されていないと生きていけないという苛立ちだ。


「俺は、結局は唯の人間だ。跳ぶ位しか能力はねーよ」


吐露するように、忌々しげに、俺はそんなことを口にしていた。
事実、俺には攻撃に特化した能力はほぼ無に近い。
足手まといもいいところだ。
体術系はもともと素養があったからいいものの、こういう特殊な敵相手は近づいて戦えば、死ぬ。


「強化されたわけでもなんでもねーから一般人と大差ねえ」


その言葉に、ザップは驚きの声を上げた。

「…は? お前、あれだけの機動力持ちながら、ほかになんもねーのか。クソ犬と変わりねえってことか?」
「ふざけんな、チェインさんは存在を操れるだろ、あんなチート級と比べるんじゃねーよ」


それに、と小さくつぶやきぼそぼそと。

「あの人胸でけぇし」

聞き返すようにザップが振り返る。

「何か言ったか?!」

その顔が、やけに癪に障ったので、眉を険しくゆがめ一言。


「うぜえよ!」




それから数分後、ザップは道を変え、何やら考えて動いている動作に変わった。
電話からインカムに切り替えたところをみると、どうやらあちら側と相談をしているらしいのはわかっていた。
そして建物の屋上あたりまでくると、そこにはレオナルドがゴーグルをつけ、青い義眼を駆使していた。


「ザップさん!」


その声が届くか否か、俺はレオナルドの隣に着地すると共に倒れこんだ。
ズジャジャと肩から落ち、声にならぬ声をあげる。
痛い、そして、情けない。

「おう、おせえよ、クソ陰毛っっ」
「って、もうエデン、満身創痍じゃん?! そんな傷でよく動けてるな?!」


義眼の少年に問われれば、精神的には確実にダメージを負っていない。
言葉はするりと出た。

「意外と元気」

「これでも能力は飛ぶことだけらしいぜ」


「絶対嘘だ…」


うわーと呆れるレオナルドに、後でぶん殴る、と倒れたまま伝えれば、あー勘弁してーと半笑いだ。




【延長戦2】



(ヤツの名前はもうクラウスさんに送信済みです。あとは、動きを止めるだけです)
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