企画展示室

□お題募集企画セカンドシーズン
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「ちょっと、ホマレ、コッチ来なさい」


「なにsっぶふぇっ」



ー数分後ー



「えーっと、K・Kさん、どうしたんすか」
「どうしたも、こうしたも、ないでしょあなた。あれだけあの男には気をつけなさいって」
「や、だから、なんのこと? え、どうして怒ってるんすか」

「…っはー…。あのねぇ…、この間、あなたスカーフェイスと一緒に食事をしたんですってね?」
「……。あれか。いや、あれはちg」
「違うもなにもアリマセン。どういうことか説明なさい。さもなくば、ユキトシも交えての家族会議よ、家族会議!」
「! ユキトシさん交えるならぜんぜん構わないよ! むしろ説明省けてラッキーだ!」






K・Kはご立腹である。
K・K家で牙狩りから預かっている見た目少年の少女、ホマレと、ライブラの伊達男、スティーブン・A・スターフェイズが食事をしていたという情報をザップから入手したからである。
昔から彼女は伊達男のことを毛嫌いする傾向にはあった。仲間としては信頼もしているし、デキる男だという認識もある。
だが、彼女の癇に障る存在なのも、また事実なのであった。
そんな男と、自分の息子二人も懐いてるほど面倒見のいい彼女が食事をしただなんて聞いたら、そしてその事実を知らなかったとなれば。


「ほんっと、嫌な男ね! まったくもう!」


「…? K・Kさん、誤解してないかなぁ…」



突然叫ばれたホマレからすれば、不思議に思うのも仕方が無いだろう。

しばらくすればK・Kの夫、ユキトシが帰宅し、四人で久しぶりに出迎えれば、とても素敵な笑顔で帰宅の挨拶を返す彼。
K・Kは久しぶりの休みをしっかりかみしめるのであった。



「それで、改めて話をするけど。」
「えーっと、K・K。一応ホマレからメールで事情は聞いてたんだけど、ね? まぁ落ち着いて聞いてくれ」
「!? これが落ち着いてられると思って?! かわいいかわいいうちのホマレが、わるーい氷男に掻っ攫われていくのを、眺めていないと!いけないの!?」
「いや、だから、そもそも、その考えが違っててだね?」
「どう違うのよ! 夜の食事よ…!? ディナーよ?!」
「…ほんっとにK・Kさんって、スターフェイズさんのこと、嫌いなんですね…」
「ええ、だいっっっきらいよ!」



ずい。



「…? なに? これ?」


K・Kはホマレが差し出してきた小さなペーパーバッグを、差し出されるまま受け取った。
唐突に渡されたので、渡された当人はいまだ目を瞬いている。


「まぁまぁ、開けてみて」


にこにことユキトシが笑顔で促してくる。
一度K・Kは渡したホマレのほうを見れば、少しばかり緊張している面持ちである。
一体なんだろう?と首をかしげながらも、その中身を覗けば、自然と声が洩れた。


「わっ…」




そこには、綺麗なデザインの、小さなガラスケースにピンクのバラがひとつ入っていた。



「綺麗なピンク色ね…。これ…」
「最近人気の、ブリザードフワラーってやつです」


再びホマレに視線を向ければ、照れくさそうに頭をかく。


「こないだスターフェイズさんと食事をしたのは、あれは、そのブリザードフラワーを作るの手伝ってもらった御礼に、僕が奢ったんです」

「ブリザードフラワーって、確か時間がかかるんじゃなかった…?」

「っす。時間をたまに割いてもらって手伝ってもらってたんです。だからその分の埋め合わせというか、なんていうか」


ソレを言ったらザップが集ってきそうだったんで…そういうニュアンスになっちゃいました。
ごめんなさい、と照れながらも申し訳なさそうに眉をひそめるものだから、K・Kはいてもたってもいられなくなって、ホマレを抱きしめていた。


「もうっ…! 私ったら…! ごめんなさいね…?」
「いやぁ…ここまで勘違いされるだなんて思いもしなかったから、びっくりしたっす…たはは…」


「ありがとうっ!」
「いや、お礼を言いたいのは、僕のほうですよー。」


す、とホマレはK・Kを剥がし、正面に改めて立ってもらう。


「こんな素敵な家庭で、幸せなひと時をいつも過ごさせてくださって、ありがとうございます」


へら、と笑うその表情は、いつもの少年のような凛としたものではなく、普通の少女のそれであった。

思い起こせば、彼女がこの家に来た頃は、笑顔など見せることも少なかった。
けれど息子達との交流がきっかけで急速に心を開いていった。
ユキトシともケンカしつつも娘と父親のような、すこしもどかしい関係を築いてくれていたのを、K・Kは知っている。
そして、K・K自身とも、そこそこ壁があったはずだが、気づけば隣で笑っている、それほどまでに距離が縮まっていた。

とても、いい子だ。
気難しいところもあるし、すこし鈍感なところもある。
けれど、ふたを開ければとても優しい、男勝りな女の子なのだ。


「こっちこそ、私なんて、家にいないことのほうが多いのに…」
「それでも、僕をつれてきてくれたのは、紛れも無い、K・Kさんです」



【家族会議】



ピンクのバラ…花言葉:感謝
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