企画展示室

□お題募集企画
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「お前、マニアックなんだよ」

苦笑いをこぼしながら言えば、あーそれわかるわ、と返してくる。
いや、わかるわとかじゃねーだろ、自分のことだろと突っ込みを入れるか迷うが、やめておく。

しかしそんなことつゆしらずなのであちらはネトゲのダウンロード経過に熱中しているようだ。
すこし、ほほえましいもんだと、ニマニマ笑ってみる。
見えないんだから構わないだろう。


「ノートPCかぁ、最近は内蔵型マイクが主流なのかねぇ」


ぼんやりとつぶやけば


「嫌だった?」


と若干声のトーンが変わって返ってきた。
それに不意をつかれて、一瞬フリーズをする。
くそ、かわいい。とかひさしぶりに思うが、コレも口に出さない。
文章だからセーフだ、ッセーフ。脚色たっぷりのほうがおもしろいだろう、と自分に言い訳。
さてどこまでが事実なのやらと若干の苦笑い。



あちらも静かなら、コチラもしゃべる材料もないし黙々と作業を進めていく。
とはいっても横道にそれたものだが、これもネタに使えるからよしとしたい。

さてはて、更新用のネタ、通話してると思いつかないんだよなぁ、と思案する、が。まぁ案の定思いつかない。


「レオナルド、なんかネタ頂戴よ」

「ん?」

「ネタネタ」

「ええー。今資料読んでたんだけど」

「あら、そりゃすまん。お仕事ガンバッテー」

「なんだよ」


返す言葉は柔らかく、小さな笑いもセットで返ってくる。
たまんないなぁ、と内心ニヤニヤはとまりそうにない。


「ダウンロードの状況はどう?」

「ええと、…半分は見えてきたね」

「おーいいじゃんいいじゃん。この会話、ネタにしてやっからな」

「はい?」

「今度出す小説のネタの一部につかわせてもらうわ」


そう告げれば、レオナルドはええっと声をあげ、うろたえているようだ。
おもしろいなぁ、と思いつつ現状をどんどん打ち込んでいく。

「ネタになるようなこと言ったかなぁ…」

「だいじょーぶ。ココまでの会話全部ネタになってるから」

「ちょっ…!? ノーナ?!」



まぁ、話の振り方が唐突なのは、申し訳ないとして。
いい感じにネタになる返答とリアクションをくれる彼には本当に感謝している。
スティーブンさん相手だと、割とドライな返答しかくれないだろう。
いやまぁ、それが彼の気恥ずかしさがあるところなのだと理解はしているが、やっぱり、たまには素直なリアクションもほしくなってしまうのは、ワガママなのだろうかね?
そういうわけでついつい昔なじみのレオナルドを突っついてしまう。
いや、気軽に声をかけられる機会をもてて本当によかったと思うし、感謝はしてもしきれない。


しばらく静かにしていれば、すこし声が聞きたくなって構ってもらいたくなるのは、不思議なことだが、こういう性格だから仕方はない。



「あー、スティーブンさん最近あたしに当たりが強くないかなぁ」

「どうしたんだよ、突然」

「んー…。あんま構ってくれないけど、指摘されることは多くなったんだよなぁ」

「うーん、唯単に仕事をしてほしいだけじゃ?」

「ええー、してるよーぅ。」

「してても、だろー。何年スティーブンさんの補佐してるんだよ」


そういわれてしまえば、ぐうの音も出ない。
そりゃあ、付き合いは長いし、仕事のパートナーとしては申し分のない力量を備えたヒトの下で働いているとは思うけれど。
あのヒトは一人で何でも出来すぎる節があると思う。いや、コレは努力が足りない人間のいいわけかもしれないけれど。



「…レオのほうが、補佐。向いてるんじゃないかなぁ」

「それ、こないだツェッドさんが言ってた。けど、やっぱり、スティーブンさんの隣は、ノーナがいいと思う」


安心するし。といわれてしまえば、ああ、もうだからこいつかわいいんだよ、愛さレオなんだよ…とK・Kさんあたりも言いそうなことを思い浮かべた。
気遣いが上手いし、それを狙ってじゃなくて、本気で言ってくれているから、尚更うれしい。


「そういう素直に言ってくれるレオ、すきだなぁ」

「褒めてのなんにもでないぞー?」

「んふふ、褒めたいからほめてんのよー。他意はないわよ」


含み笑いをこぼせば、向こうもなにやらもごもごと口にしている。


「そういう、なんか唐突に爆弾落とすのやめようか」

「爆弾?」

「いや、なんでもない。うん、なんでもないっ」





そういう流れから、なぜか夕飯まだじゃんって話になって、飯を作りにいくことになるとは思いもしなかった。
そしてその先でレオに告白されるとかね? 思わないじゃん?
誰も予想だにしないじゃん?



【なぜ手料理を作りにいって告白されねばならんのだ】



(で、答えは?)
(え、ええ? ほ、保留、で?)
(そんなバカナァー)
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