企画展示室

□お題募集企画
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「これは、何のまねだい?」
「話がある。同行願おうか、」



スターフェイズ氏






数分前、さぁ、久しぶりの就寝をしようと自室のベッドへ向おうとしたときだ。
突然窓があき、人影が現れたのだ。…音もなく。

「やぁ、こんばんは。ライブラの副官殿」


低く、威圧感のあるその声は、人影の傍らから聞こえ、人影はその切れ細な深海色の瞳をこちらに向けた。
俺は、その声と人物に、見覚えがあった。


人影の名をエデン・ホドミック、その傍らにいるであろう小さき異界幻獣、名をゲレンファイア。


「…とうとうウチまで押しかけるようになったのか、キミ」
「ことは急を要する」

「っわっっっつっ」



ガシ


ガタイのでかいエデンに腕をつかまれ、そのまま肩に担がれた。
反撃する間もなく驚きが脳内を占領し、不意を突かれた衝撃でそこから空の下に出るまで意識が追いつかなかった。
できたのは、声を上げることくらいであった。




そして冒頭に戻るわけである。


「話なら、どこでもできるだろう? おろしてはもらえないだろうか、ホドミック氏」
「無理。ゲレンに怒られる」


この図体の何処から出ているのか分からないような高い声、というより声変わり前の少年のような声である。
彼はまだ若いという事実を知るのは結構先の話だが。
それに一番の驚きを得るのも。


「さて、移動をしながらの話になってしまうわけだが、スターフェイズ氏」


間髪入れずに姿の見えぬ異界幻獣の声に、若干しかめっ面にはなってしまうが、ここから逃がしてもらえない、危害は加えられないのだろうという確証はあるため素直に会話に応じることとする。


「俺らは、"まだ"君達を知らないことになっていたはずなんだけれどね」
「まぁ、そういう硬い事を言う出ないよ。そういう話をしたいわけではないのは、あんたも分かってるだろうに」
「やかましいわ、いつもいつも、ストーカーみたいにこそこそこそこそと。気配消さずに違和感なくその辺でこちらを伺ってんのは丸分かりだ」
「だが、誰にも迷惑はかけてはおらんぞ。危害も加えておらぬ」
「そこだぞ、ご老体よ。なんのつもりで"ライブラの副官"を追いかけてるんだ」
「ふむ。そっちの理由はエデンにあるとして、わしはこいつの親代わりを勤める役割もあるからの」
「知ったことじゃ…は?」


矢継ぎ早に行われていた言葉の応酬の途中、ぴたりと気になるワードを引き当てた俺は素っ頓狂な声が出た。
コイツは、親代わりといったか? この大きな男の。


「じゃがのー、そろそろコイツも親離れをする必要があるとおもってな。こいつぁこう見えてわしにベッタリなところがあるもんでな。」
「…まさかとおもうが、俺に押し付けようって?」
「押し付けるとは失敬な。お前さんとコイツは個人的には一緒にさせたくないくらい嫌じゃ」
「……帰りたいんだが」
「…まぁ、最後まで聞くがよい、若人よ。それでの? 親離れさせるための試験を行おうとチンピラ共に絡まれに行ったわけじゃ」
「…わざわざ渦中に飛び込む度胸に驚くよ、悪い意味で」
「おう、褒められたと思っておくかの。そんでの? そのチンピラ共がやけに動作がおかしいと思ったんじゃ…言ってる傍から、追いついてきおったか」


振り返れば、そこにはやけにいびつな人間らしき存在。
しかし、様子がおかしい。

この姿の見えぬ幻獣の老体いわく、ヒトではないものに出会ったと。
そして俺のところまできたということは、何らかの確信を持ってのこと。


「血界の眷属かもしれないってことか」
「ありていに言えばそういうことじゃの。」


視線を街並みに向ければ、通りすぎる建物のガラスには、人間はうつらない。
これは、予想外だ。
ヘイトをとったせいで追いかけてきた、となると格下の存在には違いない。
ともなれば、時間稼ぎをしながらライブラのメンバーに連絡する必要がある。


「ご老体、ホドミック氏をライブラに預けたいわけだな?」
「うむ。お前さんは信用するに足る人間じゃと判断した」
「よし、では、時間稼ぎに付き合ってもらおうか。」




【真夜中の命懸けランデブー】

(功績次第ではその案件、引き受けようじゃないか)
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