企画展示室

□お題募集企画
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「ちょっとお! スカーフェイス?!」



「……なんだいノーナ」


「なんだい、じゃないわね!? あのねぇ、ここ数日帰らないってどういうことよ? 貴方馬鹿なの? ねえ」
「…仕方ないだろう、仕事なんだから」
「そりゃあそうでしょうけどもね? あのねぇ、…あら?」




「…ど、どちらさまでしょうか」


ちょうど報告書を出しに来ていたレオナルドは、一連の流れをピクリとも動かないまま見ていた。
あっけに取られていたのか、その流れを生み出した当人がこちらに気づくまで、言葉すら発せられなかった。
そうして声をかけられて、やっと口にした言葉は、相手の素性を尋ねるものだった。


「ですって、スカーフェイス」
「なんで僕に振るんだ、ノーナ」
「ん、だって、説明上手いじゃない」
「君が説明すると、僕とキミの関係って勘違いされるようなものなのか」
「そうだね!」
「割とその辺ぶれないよな! いつもキミは!」
「あ、ほら。レオがまた固まっちゃってるわよ?」
「キミのマシンガントークのせいが9割だとおもうのだけどね?」



「と、いうわけで、ノーナ・K・スターフェイズです」
「えっ」



突然の自己紹介に面食らってしまえば、その光景を見たスティーブンさんは、呆れるように頭を抱えた。
ああー、と言いたげなその様子は、どうなるか大体予想がついていたという感じである。
説明を求めるように、あの、と声をかければ彼はひとつため息をを落とし、こちらを見た。


「…、妻だよ」
「はぁ…、え、……え?!」


一言、ため息のように搾り出された言葉はおもっていたより衝撃的な事実で、一瞬理解が追いつかなかったくらいだ。


突然執務室に嵐のように来訪したのは、正真正銘、スティーブンさんの奥さんなのだそうだ。
もともと昔なじみだった二人は早い時期に結婚していたとか。
指輪をしていないのは、普段はお互い、ネックレスに通しているからとかで。


「そうだったんですか…、いや、うん、結構びっくりしました」
「そうだろうねぇ、こんな性悪イケメンと、普通過ぎる一般人だもんねえ」


わはは、と笑う彼女は、なんというか。キャラの濃い人だなぁと感じた。
そして疲れたように、というか3徹状態で疲れているのに更に疲労感の増した雰囲気のスティーブンさんが頭を抱えている。

「あ、そうだ。スカーフェイス。用事があったんだった」


がさごそとノーナさんは自分の鞄を漁り、そこから取り出した大きな茶封筒を机に置いた。
やけに分厚く、スティーブンさんも一瞬不思議そうな表情。
少し考えた末に、我に返って封筒を急いで開ければやはり分厚い紙の束。


「お前、この資料よく持ち出せたな…!?」
「まかせ、たまえ!」


誉めたまえ誉めたまえ!と笑う。
なんなんですか?それ。と聞けば、半ば呆れながら見せてくれた表紙には社外秘と書かれたもの。


「一応言っとくけど、正式に借りてきたんだからね?」
「……たまに凄いよな。キミ」
「…それが一仕事してきた嫁に言う台詞かい? スカーフェイス…」



【夫婦】

(キミ、手放しで褒めたら調子に乗るだろ…)
(…! そうだね!?)
(せめて否定してくれよ…)


(えーっと、大変ですね…?)
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