企画展示室

□お題募集企画
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「…、うむ、……ああ、わかっている…大丈夫だ」


なにやら先ほどからクラウスさんは電話をしながら困っている。
どうも電話の相手から心配をされているようで、しきりに相槌を打つようにうなづいている。





現在、ぼくとクラウスさん、そしてギルベルトさんは空港に向っている。
もちろん、ギルベルトさんの運転だ。


どうして空港に向っているかと言えば、どうもクラウスさんの家族がやってくるとかで。
スティーブンさんは今日は外の仕事に出ているし、ザップさんはまだ出勤していなかったし。
ツェッドさんはスティーブンさんの外回りの付き添いだそうで、K・Kさんは午後から事務所にかおをだすとのことだ。
チェインさんは今日は人狼局のほうの仕事があるとかでこられないという連絡がきた。



そういうわけで、クラウスさんの同伴は僕になったというわけだ。
運転席のギルベルトさんに、その隣の助手席に座る僕。
そして後ろにクラウスさん。

「あの、ギルベルトさん」
「どうなさいましたか?」
「いえ、クラウスさんのご家族、ということなんですけど」
「ああ、ノーナ奥様ですね」

「…奥様?!」


その言葉に、さすがの僕も驚き、膝に座っていたソニックがビクッとした。
ごめん、ソニック。
だがしかし、予想だにしていなかった間柄の存在に、動揺せざる得ない。


「…はぁー、クラウスさん、結婚してたんすねぇ」


指輪をしていないので、未婚だとばかりおもっていた、と口にすれば、ギルベルトさんは苦笑いを浮かべた。

「それは、しかたないでしょうな。奥様が坊ちゃまの指輪を預かっておいでですから」
「え…ええっ?」
「武器をお持ちになるのだから、邪魔になるでしょう。と」

それと、だからといって後生大事にしまわれるのも嫌だからと。


「…なかなかユニークな奥さんなんですね…」
「ええ、とても楽しいお方ですよ」


後ろのクラウスさんはいまだに電話中だ。
相手は奥さんだろうか? ……うん?


「あの、ギルベルトさん、飛行機の中って通話禁止じゃ…」
「!!! 坊ちゃま! ノーナ様はいまどちらに?!」



















「いっやぁ、むちゃんこ早く着いちゃったからね? みんなになにかお土産をっておもって街のほうまで出てたら、異界存在同士の喧嘩に巻き込まれちゃってねぇ?」
「…空港に戻るつもりが戻れなくなっていた、と」
「いぇーっす! おっふこーす!」
「坊ちゃまも、そういう話はお早めにわたくしめに通してくださいませんと…」
「…すまない、ギルベルト」



なんやかんやあって、無事クラウスの奥さんを回収できたはいいのだけれど。


「きみかぁ! クラウスが言ってたレオナルドくんは!」



現在、絶賛後部座席で奥さんに可愛がられています。
クラウスさん、助けてクラウスさん。
助手席になんで収まっちゃってんの、助けてクラウスさぁぁああん!
頭なでくりまわされたり、ほっぺぷにぷにされたり、若いね〜若いっていいねぇ!といじくりまわされてます。


ああ!クラウスさんも困ってる!


「奥様、あまり構いすぎると、嫌われてしまいますよ?」

「ん、そうか。おおー大丈夫かい? レオナルドくん」
「だいじょぶっす、のーぷろぶれーむ…」
「大丈夫じゃないね!? ごめんね?!」




奥さんの名前はノーナさん。
現在は日本の博物館で働いているそうだ。
もともと日系の血が遠縁にいるらしく、彼女の髪の色はとても艶やかな黒で、首元までの短いものだがやわらかそうな癖毛だ。
彼女には、特別、異能があるわけではなく、クラウスさんの進言もあり日本へ移ったらしい。
そして数年に二度ほどこうやって帰ってくるとのことだ。


「日本も最近不穏な空気なのよねー、情勢とかさー治安とかさー」
「それ、大丈夫なんすか?」
「ま、HLにくらべりゃぜんぜんだけどねーほんとぜんぜん」


そうやって笑うノーナさんは、とても気さくで底抜けに明るくて、まるでひまわりみたいな人だとかんじた。





【夫婦】



(ただいーま、クラーウス!)
(おお、元気そうでなによりだ)



(なにこれ熱々じゃないっすか!)
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