企画展示室

□お題募集企画
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「お話があるのですが」

「なんでしょうか? ミス・ノーナ」

「ええっと、言いにくいのですけど、ね? この間の、あの、その、…き、き、キス…のことなんですが」



「…起きていらしたのですか」




【現実逃避はもうしない】



できるだけ、できるだけ冷静に話を切り出したつもりだよ!
でも結局そうなっちゃうよね!
誰もいないタイミング狙ったからまだ恥ずかしくないけど、きまずいよね!
不意打ちの寝込みにキスってことやられたらね! 気になるじゃん!
気にならないほうがおかしいよ!?


「おきては、いなかったですけ、ど。それで眼が覚めた、というか…」
「それは…もうしわけg」
「そうではなくって、ええと。その、意図が知りたくて…」

危うく謝られる流れで流されちゃうとこだよね!
さすがにそれは回避しないといけないから、本題切り出さなきゃね!?
意図について聞けば、諦めたような顔をしたギルベルトさん。



「つい、抑えられなくなってしまいまして…」
「…おおう、わりとド直球な回答キター…」


っていうか、これ、は、両思いというやつでしょうか?!
いや、えっと、思った以上に情熱的な人なの!? ギルベルトさん!?

ツッコミがおっつかなくってパニックだよ!?

「あ、いや、抑えが利かなくなってって、えっと、えっと…?」

その場の勢いじゃなかったのは、わかったけど、あれ? ってことは、あたしのアプローチ、届いてたって、こと?


「お恥ずかしい限りですが…以前から隙は狙って…おりましたね」

「っっーーーー!」


わーーーーーこれえんだああああああってやつだ!わああああ!はっず!はっずい!
狙われてたの?! これ狙われたの!?
照れる…! 超照れるんだけど!? 言い出した本人だけど、めちゃくちゃ照れるよ?!
い、いつから?!とか聞きたいけど、これ以上自分を辱めるのもあれだよ!?
そんなパニック状態に気がついたギルベルトさん、なんか弁明するように口を開いたよ!?


「ミス・ノーナから、まさかアプローチがあるとは、露ほども思っておりませんでしたので…。」



「えっ」


アプローチする前、から、です、か?とするっとぼろっと吐き出せば、困ったように笑いながら。


「そう、なりますでしょうか」


おおおおおう。おおう。これは…これは…おおおおう。

「ちょ、ちょっと、待って、ね。ギルベルトさん。いま、整理、します」


片手で静止をかけたのは、一歩前、ギルベルトさんが距離を詰めてきたからだからね!?
焦るよね!? 誰だってあせるよね!?
つまり、アプローチ前から、ギルベルトさんはあたしに気があって…? あたしからアプローチされて? 手を出すタイミング虎視眈々と狙ってた…?


「やっ、虎視眈々は言い方に御幣招くから!」
「あながち間違いではございませんね!」
「ええええ!? いや、べ、べつにほかの人たちから特別好かれてる、わけじゃないですし、ね?」


普通の生活してたつもりですよ?! そしてギルベルトさんが若干前かがみなのは、なんでかな!?
ぐっとこぶしを作ってるのはなんでかな!?そんなキャラだったかな!?


「なにをおっしゃいますか…クラウス坊ちゃまと、ザップさんは貴方様を…」
「うええええええ?! なにそれ、初耳なのだけれど! ういみみなのだけれど!」



衝撃的な事実に驚いてしまったじゃないか! あれか! ギルベルトさんしか見えてなかったから他所からの好意は弾いちゃってたのか!いやいやいや!

「ないですって!」
「坊ちゃまに至っては、わたくしに相談をされていたくらいで…」
「…割かしマジバナだった…」
「しかし、わたくしはぼっちゃまであろうとも、敵に塩を送るようなまねはいたしません。ご自身でお考えいただくよう、提案いたしました」
「それでもちゃんとアドバイスしてるようなもんですよね!? なにこれ、どっかに仕込みでもあるんですか…こわい、なにそれこわい」
「事実でございますよ!」


「は、はひ!」


手を握られれば上ずった声でるよね!?
びっくりしたんだから! でる! よね!?
あああ、でも、夢じゃないのね、これ、夢じゃないんだわ…。
はーぁーと声を上げればぼろっと涙が出た。


「ギルベルトさん、すきー…」


わああ、と声を上げてみっともなく泣いてしまった。
そんなあたしの頭をやさしく撫でてくれながら、ギルベルトさんは、わたくしもですよ、と柔和な声で言ってくれた。
こういう時って普通なら抱きしめてくれるんだけど、この人そういうとこ紳士だよね! まじで天使だわ!


(このまま死んでもいいかもれない…)
(それはさすがに困りますよ…?)
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