企画展示室
□お題募集企画セカンドシーズン
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「くっさあああああ! なんだよ! この臭い!」
叫び声は事務所じゅうに響いた。
「うるさいなぁ、ちょっと静かにしててよ」
あたしは振り返りもせず、苦言をもらす青年に言葉を投げれば、背年は不機嫌そうにこちらの座って居るソファまでやってきた。
臭いなら外で飯を食ってくればいいのだよ。
「飯時にそんなくっせーもんやってんじゃねーよ、なんだよ、これ」
「テメー以外はみんな食ったわ。そしてこれは、レジンキットだ」
「はぁ? レジンキットお? なんだそりゃ」
「アクセ創るときに使われる特殊樹脂。紫外線光に当ててると硬化するのよ。UVレジンって呼ばれてるわね」
「んなこたきいてねえよ、なんでそんなもんここで広げてるんだっつー話だ」
「なんでって、アクセ創るために決まってるじゃないの」
「…だめだ、ぜんっぜん話になんねぇ」
スターフェイズさぁんと執務室の扉の向こうに叫んでいるあたり、告げ口しようということなのだろうが、残念なことに。
「すてぶん氏はこの臭いから逃げるために篭城中です」
「すでに被害者がいたか…っ!…っく、惜しい人を亡くしたぜ」
『勝手に殺すんじゃないぞ!』
扉の向こうから怒号が聞こえたあたり、しっかり会話は筒抜けのようだ。
げへ、と面食らった表情でザップは酷い顔をした。
臭いのは重々承知だっつーの。
「つーか、紫外線ならそとだろ、外」
「ちっちっちー最近は便利なものでね? こういうものがあるわけですよ」
取り出したのはスイッチのついたライトである。
ソレを起動させ、型に流し込んだレジンをそのライトの下に置き、当てる。
「UVライトだぞー。これでアクセ作りがはかどるってもんよー!」
「…よくわかんねーけど、どういうアクセつくってんだよそれ」
「まー待ってなってー。」
数分間ライトの下に晒し、引き出して型から抜けば。
「機械片で作った花束ブローチの完成さー」
楕円形の型に、機械片を並べ、そこにレジンを流し込み、形を整えながら気泡を抜いていく。
気泡はドライヤーを当てておけば自然と抜けるのでとても便利だ。
そしてUVライトを使い、急速に固めれば、モチーフは完成だ。
そのモチーフの裏面に接着剤をたらし、ブローチパーツをぎゅ、とくっつければ、できあがりである。
「できあがればくさくないんだな」
「そうねー。レジン液にもよるけど、今回は安物のを使ったから硬化させるまですんごく臭いのよ。そこはもう仕方ないわよね。どうせグラデ加工のときにネイル液使うし、臭さなんて気にしてられないっしょ」
「どうりでかいだことのある香りだと…。あの臭い、きつくねーか?」
「そんなん気にしてたらものづくりなんざできんわ!」
【ガラクタの花束ブローチ】
(これ、つかうときあんのかよ)
(え? 観賞用だけど?)
(女って、つくづくよくわかんねぇ…)