企画展示室
□お題募集企画
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一昨日越してきたウォッチ兄妹は、とても勇敢な子どもだ。
中学生のザップよりも肝が据わっていて、クラウス並みに自分の意志を決して折らない、そんな兄妹だ。
特に、12歳になったばかりの兄、レオナルドは妹想いの優しい少年である。
そんな幼い彼には、秘密があった。
「あのとき、どうして」
「これの、おかげ…かな」
いつも伏せているまぶたをひらけば、とても綺麗なガラス玉のような瞳が。
それを見て驚いたのはクラウスやエイブラムスさんだった。
「かかかかっ…神々の、っ! ぎ、ぎ、義眼じゃあないか!!」
「あの、今日は、ありがとうございました」
帰り道、取り返した車椅子を押しながら、ぼくとレオナルドは夕暮れの迫るアスファルトを踏みながら家路に向かっている。
そんななか、彼はぽつりと、呟いた。
「いや、構わないさ。むしろ、助かったのは僕らのほうじゃないか」
「そうかもしれないですけど、知り合って間もないのに」
「それこそ、きにする必要はないさ。」
軽く笑えば、レオナルドは少し困った表情を浮かべた。
「…正直、この街でうまく生活していけるのか、不安だったんです」
妹はご存じの通りですし。
だけど、と言葉を切る彼は困った表情のまま、笑った。
「お兄さんたち、ライブラに出会えた。」
嬉しい出会いです。
へへっと笑う彼。それは嘘なき言葉だ。
その言葉に、息を忘れるくらいの破壊力が秘められていたのは、誰にも内緒だ。
「だけど、レオナルドくん。そんなあっさりとライブラに入ると決めて良かったのかい?」
「だって、この街にいれば、一人ではミシェーラは守れない程度にはおかしなとこですよ?」
「キミ自身も、な?」
神々の義眼はそのくらい希少な存在だ。
「わかってます」
へら、と夕焼け色に染まった笑顔は、とても眩しかった。
【夕暮れ時】