夢部屋
□【昼下がり】
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「おーい、しょうねーん」
「ん…、ぅあ?」
「お。おきたね。もうすぐきみんとこの所属の誰かが迎えに来るし、まぁゆっくりしてな」
「えっ、どうやって連絡を」
「きみのスマホ、お借りしたよー。だいじょーぶ通話料はかからない方法使ったし、誰と通話したかも把握してないよん」
どうやって、と聞かれたが、こたえる気は一切ない。
こちとらそれで生きてきてるんだから。名売れしてるってことは対策とられたら困る場合も出てきそうだ。
さて、そろそろ面倒くさくなってきたし、帰るとしようかな。
「んじゃ、あたしは帰るねー」
「あ、あのっ」
「なにさ、あたし帰りたいんだよ。もうすぐHLTV始まっちゃうからさー」
「あっ、ありがとうございました!」
「はぁ? ああ、まあ、でも君のその力のおかげっしょ。おつかれ」
じゃーね、と手を振り部屋を出る。
エレベーターに乗り最下階まで降りれば、入れ違いに男とすれ違う。
電話をしながら乗り込むのをあたしは傍目で見送る。
「やっとつながったか。 無事なんだな、少年」
その様子をみて、ああ、こいつか。と内心ため息をつく。
いかにもーって感じの顔つきに、傷。
首筋にもなにやら火傷らしきものも見えた。
さ、帰ろ帰ろ。
早めに退散しなきゃすれ違った男やら少年が追ってくる可能性はある。
これ以上面倒ごとは増やしたくはないなーと思いながら、あたしはダッシュで街へと身体を投じたのだった。
【実に面白くなかった週末の昼下がり】
(さっきすれ違わなかったんですか?)
(へ?)
おわり
→あとがき