企画展示室
□お題募集企画セカンドシーズン
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「はぁ〜あ〜…。出たかったなぁ〜…フォークダンス…」
ぎっ、と椅子を回転させて傍目で窓の外を見下ろせば、広い校庭の真ん中で大きなキャンプファイアーが轟々と燃え盛っている。
その周りを制服であったり、学園祭での衣装を着ていたり、教員も混じって踊っている。
ぱっとみて、私のお目当ての人物は、いない。と思いきや、そのダンスの輪の外で、誰かを探しているらしき挙動の人物。
背が高くて、炎の赤が彼の赤い髪と合わさって目を引く。
「…クラウスせんせー…」
小さくつぶやいて、目線を戻す。
一瞬その傍目に、こちらとあちらの目線が合ったようにも感じたが、気のせいに違いない。
ここは四階建ての四階で、そして一番遠い教室、生徒会室なのだから。
そうして自分の仕事をしている机にうっつぶせ、ため息を吐く。
わたしの仕事は、本日執り行われた学園祭最終日の総売り上げの清算などである。
学園祭が終われば直ぐ中間テストのための授業が開始される。
実のところ、学園祭の最中に教員は授業の準備を進めているところもあったはずだ。
実際、うちの生徒会顧問を担当している数学教師は、隣の部屋で現在来週からの授業範囲に使用する小テストの最終確認を行っている。
スパルタと名高い人気教師、スティーブン・A・スターフェイズ氏だ。
私が生徒会長に任命された1年の秋、それを追うように生徒会顧問に就任した、ストーカー教師である。
だいっきらいである。
今回の仕事のせいで、本当は最終日のフォークダンスに参加するつもりが、叶わなかった。
去年はスティーブン教諭の妨害のおかげで踊れず、今回も然り。
「きらいだー。スティーブン先生めー…」
「俺がどうかしたのか? ん?」
「ぅわ、腹立つ。いつからいんだよ、このストーカー教師めっっ!」
つぶやきはひょいと拾い上げられ、当人は涼しげな顔で首をひねっている。
自分より目上の立場である教員に向ってそんなののしり言葉をぶん投げれば、ひょいひょいひょひょいのひょいといった感じで避けられてしまう。
本当に腹の立つ人間だ。
「なんだい、フォークダンスに出たかったのなら言ってくれれば出していたのに。」
「どうせあんたとセットなんだろ?」
「もちろん。生徒会長のスケジュール管理は顧問である俺の仕事だからな」
「じゃあいみなんてないわよ。あたしはクラウス先生と踊りたかったの! なんなの、嫌がらせでしょ」
「俺では役不足、と?」
「そうじゃないわ。 あたしは、好きな人と踊りたいの! わかる?!」
いつものように食いつけば、への河童と言いたげな表情でやれやれ、と頭を振っている。
「残念だが、俺もあいにくと君が好きでね。譲れない想いなんだ。わかっておくれ」
「わかりたくないわね! はんっ!」
手元にあったダーツの矢をスティーブン先生に向けて投げれば、瞬時に氷がダーツからあふれてそのまま落下した。
「くそっ」
「いい加減、観念して俺のものにならないかい?」
いつもの軽い調子で、いつものようにあたしを誘ってくる。
【輝く月が照らしてる】
(ぜってー嫌だ)