長編

□運命の人
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【Side碧 】

ー4年前ー

私は当時付き合っていた彼の子を妊娠した。

産まれてすぐ親に捨てられ、中学卒業まで養護施設で育った私に初めて出来た家族と呼べる存在だった。

同い年の彼とは短大の時アルバイト先で知り合い、少ししてつきあい始めた。
卒業後就職してからも二人の関係は変わることなく、仕事が休みの週末にはデートしたりしていつしか将来の話をするようにもなっていた。

ただどうしても養護施設で育ったことが言えずその事だけは彼に隠していた。



そんな時分かった妊娠……



不安を抱えながらも彼にそのことを話すと、驚きながらも喜んでくれて結婚しようと言ってくれた。


幸せだった……今までで一番幸せだった。


そして彼に隠していた事実を伝え彼の実家に挨拶に行った時、彼の両親に反対されその後二人の関係も徐々にぎくしゃくしはじめた。


最終的に彼から堕ろして欲しいと言われ彼との別れを選んだ。




正直不安がなかったわけではない、それでも私はもう一人じゃないその事実が何より嬉しかった。
そして産まれた赤ちゃんを見た瞬間に愛おしくて、何があってもこの子だけは私が守るそう思えた。


波音……


人の心を癒すそんな波の音のような存在になって欲しくて付けた名前。

誰も頼れる人もいない中で慣れない育児に苦戦しながらも、波音との生活は私にとってとても幸せなものだった。


1年育休を取る予定だったが、会社からは半年で職場に復帰して欲しいと言われて生後半年の波音を保育園に預けて復職した。

本当はもっと波音と一緒にいたかった。

でも当時勤めていた会社は身よりもない短大卒の私が入れたのが奇跡に近いような大きな会社で、これからシングルマザーとして生きていかなければならない私に他に選択の余地はなかった。

週6日保育園に預け、いつも保育園のお迎えは決まってクラスで一番最後。

家に帰ってきてからも家事と育児で睡眠時間も満足にままならない日々、それでも波音の笑顔を見るとどんなことでも頑張れた。

休日はもちろん他の家族に負けないようにいろんなとこに出掛けて、たくさん写真も撮ったりした。

そして迎えた初めての誕生日。
ささやかだけど小さなケーキでお祝いをした。 


これからも毎年ろうそくの数を1本ずつ増やして一緒にお祝いしてあげられると信じて疑わなかった。
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