長編
□命の花
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翌日仕事の前に碧ちゃんの家を訪ね、チャイムを押したが応答がなかった。
そして下に降りてコンシェルジュデスクには、榊さんではない別の人がいた。
「おはようございます、田崎様。」
「あの、榊さんは?」
「榊は本日お休みをいただいておりますが、榊に何かご用でしょうか?もし急ぎの用であればすぐに榊に連絡いたしますが、いかがなさいますか?」
「いえ、急ぎではないので大丈夫です。」
「そうですか、ではいってらっしゃいませ。」
見送りを受けて外で待っていたマネージャーの車に乗り込み、車内で碧ちゃんのことを考えていた。
昨日のことが気になって、彼女の携帯に電話をしたがつながらなかった。
榊さんが仕事を休むのは滅多にないし、おそらく碧ちゃんと一緒にいるのだろう。
二人のことが気になりながらも、俺は仕事に向かった。
ボイトレの休憩中にふとこの前碧ちゃんがケーキを食べていたときの顔が浮かんだ。
あのとき、すげ〜いい顔で食べてたよな……またあの顔見たいし、今日これ終わったらケーキ買ってもう一回行ってみようかな。
そんなことを考えていた俺に、休憩しにきた篤志さんが苦笑いしながら話しかけてくる。
「敬浩、何考えてるの?さっきから顔がニヤけてるよ。」
「あっ、すみません(笑)」
「いやっ、いいけど。せっかくのイケメンが台無しだから、もしかしてこの前言ってた隣の人と何か進展があったとか?」
いつもながら、勘の鋭い篤志さん……
「実は少しだけ……俺自分の仕事のこと話して、驚いてはいたけどちゃんとそのこと受け入れてくれたんです。まぁ彼女の過去に何があったかは聞けなかったんですけど、でも彼女自分の大切な話俺に話してくれるって言ってくれて。 」
「へぇ〜、よかったじゃん。」
「はい、あっそういえば彼女俺が入る前の昔のEXILEのことは知ってたんですよ。」
「そうなんだ。」
「そうだ、彼女の写真……」
俺は鞄から携帯を取り出し、この前彼女がケーキを食べていたときの写真を篤志さんに見せた。
「かわいくないですか?」
その写真を見た途端、篤志さんの顔色が一瞬にして険しくなった。
そして、まさかの一言が……
「碧ちゃん……」
「えっ、篤志さんどうして彼女の名前を……俺言ってないですよね?」
「……彼女はJ Soul Brothersの頃からHIROさんたちの知り合いで、敬浩が加入する少し前まで俺も彼女と連絡取り合ってたんだ。いなくなってからもすごく気になってて……でもよかった、ちょっと痩せたけどあの頃と同じ顔してる。」
そう言って、彼女の写真を懐かしそうに篤志さんはしばらく眺めていた。