長編

□運命の人
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翌日、俺は再び昨日訪れた碧ちゃんのマンションに来た。

マンションの前に着いたことを知らせると、すぐに碧ちゃんが俺の車の元へとやってくる。


この前と昨日会った時のスーツ姿の彼女とは違い、小花柄のかわいらしいワンピースに淡いピンク色のカーディガン姿の彼女に目を奪われる。


『おはよう、あっちゃん!』

「おはよう、練習頑張ったんだね(笑)」

『うん、猛練習したからね(笑)ちゃんと照れずにあっちゃんって言えるようになったよ!!』


冗談混じりにそう答えた彼女に俺も自然と笑顔になる。


「さて、姫は今日はどこに行きたいかな?」


『うん、あのね鎌倉の信縁神社に行きたいの。』

「信縁神社?有名なとこなの?」

『ううん、でもすっごくご利益がある
んだよ。』


初めて聞いた名前の神社に少し驚いた。

昨日神様を信じないと言った俺とそこに行こうとする碧ちゃんの気持ちが正直理解できなかった。

とりあえずナビで名称を検索してそこに向かい車を走らせた。


『ごめんね、運転させちゃって。』

「ううん、嫌いじゃないから運転。碧ちゃんは運転するの?」

『ちゃんと免許は持ってるけど、ほとんどしないかな。』

「してみる?」

『えっ!?いや……その……』

「冗談だよ、その返答からして何か怖いし(笑)もしかしてAT限定??」

『違います!ちゃんとMTで取ったから。しかも追加なしで一発で!』

「本当に!?」

『うん、こう見えてやればできる子なんだから!』

「ははっ、かわいいなぁ碧ちゃん。」

『もぉ〜、年上をからかわないの。』

「そうだ年上だったよね、忘れてた(笑)」

『あっちゃん!!』



そんなやりとりをしながら高速に乗り途中のSAで休憩をとる。


『私何か飲み物買ってくるね、何がいい??』

「じゃあ、カフェオレお願いしてもいい?」

『ぷっ、子供だね(笑)私コーヒーブラックしか飲まないよ。』

「……ブラック苦くて飲めない(笑)」

『了解!!待ってて。』


車を降り売店へと小走りで向かう碧ちゃんの姿を車内から見つめる。


小さくてちょこまかしてまるで小動物のような彼女がわいらしくてたまらない。

早く俺の元に戻ってきて……一人になった途端そんなことを思ってしまう俺。


かなりの重傷だな(笑)……

完全に彼女に溺れかけている……自分のそんな危険性を認識し始めてた。


両手に飲み物を持って戻ってきた彼女。


『はい、どうぞ。』

「ありがとう。」


戻って来た彼女の表情はなぜか少し緊張しているように見えた。


『あっちゃん……見てもらいたいものがあるの。」

「うん??何?」


彼女は鞄からアルバムらしきものを取り出し俺の目の前に差し出した。


表紙に笑顔のかわいい赤ちゃんの写真があった。


「かわいいね……この子は?」

『私の…………私の子供…………この世で一番大切な宝物。』

「えっ…………」


予想もしていなかった碧ちゃんの答えに動揺を隠せない。


「碧ちゃんお母さんだったの??」

『そう、母親だったの……4年前は……』


碧ちゃんの言い方に違和感を感じる。

そして気になったことを聞いた。

「4年前はって今もじゃないの??」

『波音はもうこの世にはいないから、亡くなったの3年前の2月に。私が殺したの…………』

「…………殺した?」


決して冗談で言っているようには見えない彼女の様子に、俺はどうしていいのか分からずにただその後の彼女の言葉を待った。


彼女の話は想像を絶する悲しすぎる彼女の過去だった。
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