novel 長編
□ただいま潜入捜査中
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「‥‥‥‥でかい。」
ポニーテールの少年がポツリと呟く。
目の前にあるのは少年の身長の2倍以上はゆうにある大きな門。
所々に美しい装飾が成されている。
それらはどことなく、アンティークな雰囲気を感じさせるものだった。
そして、その門の先に‥‥‥いや、ずっと、ずっっっっっと先にあるのはこれまた大きな建物だった。
それは物語のお姫様が暮らしていそうな青い屋根に白い城壁をもつ立派な城だった。
遠目だからまだよく見えないが、こんなものを目にする人間はそう多くはないだろう。
一応言っておくが、ここはバリバリの日本だ。
そして、この建物は一般常識のなかでは学校と言われるもののはずだ。
「ここが、浅蜊学園か‥‥。」
そう、ここは日本屈指の名門校、浅蜊学園なのだ。
ここには未来の、日本や世界のリーダーたちが通っている。
勿論、表だけではなく裏の方もいたりするのだが。
ついでに、ここは男子校なので、女子はいないらしい。
(なんで、俺がこんなむさ苦しい男しかいない学園なんかに‥‥‥)
手に持っていた学園案内のパンフレットを涙目で睨み付ける。
(こんな仕事なんかなければ、もっとジョットとイチャイチャ出来たのに‥‥‥‥!)
ここにいる少年の名前は、沢田綱吉。
長い髪をポニーテールにしているせいか、余り男に見えっ、‥‥げふんげふん、中性的なイメージを与える。
顔はこれまた美しいのだが、残念ながら今は顔を思いっきりしかめているので、その顔をはっきり拝めることは出来ない。
綱吉はこの度、浅蜊学園に編入することになったのだ。
勿論、編入試験を突破しての正式なものだ。
今までは誰が学校なんかに入るかと思っていたのだが、仕事の都合上、仕方なく試験を受けたのだ。
本来ならジョット以外の人間しかいないところになど1秒もいたくない。
(まったく、なんでボンゴレの情報収集なんて受けたんだよ‥‥‥、ジョットの馬鹿)
先程もいったが、ここは表だけではなく、未来の裏のリーダーたちがいる。
そして、ボンゴレといえばマフィア界のなかでは知らないものがいないほどの力の持ち主。
いつ依頼が来てもいいように情報を事前に集めておくには充分な相手だ。
(‥‥‥‥まさか、ボンゴレのパソコンのなかにこれからの守護者たちの情報がないなんて‥‥‥)
綱吉だって、いきなりこんなことをしたのではない。
実は1度、ハッキングをして情報を探っていたのだが、情報自体がそこに存在していなかったのだ。
まあ、焦るものでもないしと思い、諦めかけたその時にジョットが依頼を持ってきたのだ。
それが、今回の仕事だった。
ジョットと綱吉の性格上1度受けた依頼を断るわけにもいかない。
だから綱吉はこの学園に守護者たちがいることを知り、潜入することにしたのだ。
綱吉も、今まで何度も潜入することがあったのでそれで納得したのだが、問題はそこからだった。
無事、試験に合格し手続きを終えたあと、ふとこのパンフレットを見たときそれに気づいたのだ。
『浅蜊学園に入学、編入したものは卒業するまで学園内で生活しなければならない。』