世界一初恋 短編
□カチューシャ
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「あっつい!!!」
最近梅雨も明けて本格的に暑くなってきた。
しかも今日はいつもより一段と暑い。
外に出れば焼けるくらいの日射が身体にじわじわと染み込んでくるようだ。
「おかえりなさい、木佐さん外大丈夫でしたか?」
「大丈夫じゃないよ〜もう歩くだけで汗だくだし、喉は渇くし、日に焼けて痛いし最悪ー」
外から帰ってきた木佐は余程暑かったのか手に持っていたペットボトルを一気に飲み干す。
「あれ?木佐さんそのカチューシャどうしたんですか?朝はしてませんでしたよね?」
木佐の前髪には女の子がつけるような可愛らしいカチューシャがつけられていた。
「ん?あぁ汗で髪が落ちてきちゃったから途中で買ってきたんだよ、でもそこ女の子向けのばっかだったんだよねー
あっそうだ!!」
「??」
木佐は何か思い付いたように鞄の中をごそごそし始まる。
「えいっ!!」
「!ちょっ、木佐さん!」
木佐が何かを鞄から出し、律の前髪に何かを取り付ける。
「じゃーんっりっちゃん、俺とお揃いーw」
木佐が律に付けたのは木佐が付けているのとは色違いのカチューシャだった。
「暑いから丁度いいでしょ?りっちゃんの前髪も落ちてきちゃってるし。思ったより涼しいでしょ?おでこ出してるりっちゃんかわいいー」
「なっ!!別にかわいくありません!でも、確かに思ったよりは涼しくなったのでお借りします」
それから普通に仕事しているとなぜか周りの女性達がひそひそ話をしていたり集まってこちらを見ている姿がちらほら見られた。
(なんか、すごい見られてる気がするけどなんだ?)
律は休憩所の自販機で周りの反応に首を傾げる。
その時会議でずっと席を外していた高野が目の前に現れた。
「あ、高野さん会議お疲れさます」
「あぁ、お疲れ・・・・なに?それ・・・」
高野は一瞬動きが止まり、そしてカチューシャを指差した。
「??あぁ、これ木佐さんが貸してくれたんですよ。
結構前髪あげるだけでも涼しくなりま・・・」チュッ・・・
律が言葉を言い終わらないうちに高野は律の額に口づけた。
「ちょっと!!高野さん!何するんですか!」
「俺以外にそんな姿見せてんじゃねえよ」
「はぁ!?ちょっ、やめっ・・・」
チュッ チュッ
高野は律が止めるのも聞かないまま額に何度も口づけ、最後に唇にキスをした。
「今日、帰ったらお仕置きな」
「はぁ、意味が、わかりません・・・・っ」
(てかこの人、ここが休憩所だってわかってるのか?もし人が来たりしたら・・・ん?)
近くの小さな鏡に写った自分がふと目に入りよく見てみると額にわずかに赤い跡が残っていた。
「!!!!高野さん!!」
「これでもうそれ付けられねーな」
「っ!!」
俺は震える手でカチューシャを取り、跡を隠すように前髪をぐしゃぐしゃにした。
「木佐さん、これありがとうございました」
「ん?もう外しちゃったの?かわいかったのになー」
「い、いえ。もう大丈夫です・・・」
俺はカチューシャを木佐さんに返し高野さんに怒った視線を向けるが高野さんは満足そうな顔をして笑っていた。