世界一初恋 短編

□おいで
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一日の中で嫌なことがあったり失敗してしまった日はその事がずっと心の中でもやもやしていて、まるで喉に何かが詰まってるような圧迫感が抜けなくなる。
食欲もなくなるし、人と話している時でさえその事ばかり考えてしまって空回りしたり、嫌な方向にばかり考えがいってしまって気持ちが落ち着かない。

一人で暮らしていた時は帰って、ベッドに直行し踞っていた。
眠れず朝まで涙を流し続ける日もあった。
でも、今は違う。

ガチャ
「おかえり、律」
「・・・ただいま、です」

家で出迎えてくれる人がいる。
そして、この人は俺がどんなに隠しても俺の異変にすぐに気がつくんだ。

「律?何かあったか?」
「・・・なんでもありません」
「・・・腹へっただろ、飯食おう」
「はい」

二人であまり会話もせずにご飯を食べて、食器を片付ける。そして今日みたいな日はいつもその後、高野はソファーに移動した。
そして

「律。おいで」

優しい声音で高野は腕を広げて律を呼ぶ。
律も最初の頃は抵抗したが今ではすぐに高野の腕の中に入り抱き返す。

高野はそんな律の頭を優しく撫で、子供をあやすように一定のリズムで背中を叩いた。

「大丈夫だぞ、お前は頑張ってる。お前が頑張ってるの俺は見てるからな。俺だけじゃない、木佐もトリも、美濃も、横澤だってこの間お前のと褒めてたよ。だから大丈夫だ・・・また頑張ればいい」
「っ・・・・ぅ・・・ぁっ!!」

涙が止まらない。
今までで心に溜めてたものがどんどん溢れてくるっ
止まらないっ・・・!

どうしてこの人はこんなにも優しいのだろう。
高野さんが抱き締めてくれるだけで、傍にいてくれるだけで、どうしてこんなにも心が軽くなるのだろう。

俺はこの人に甘えてばかりだ。でも、どうしても、この人の手にすがってしまう。

一人で苦しむのが辛かった。
本当は寂しかった。
誰もいない部屋で後悔などに包まれた感情の中にいるのがとてつもなく寂しかった。

高野さんの腕の中にいるとすごく安心する。今まであった息苦しさも、少しずつ浄化されていくようになくなった。

「・・・たかの、さん」
「ん?」
「そばに、いてください」

俺の傍にいてください。
まだあまり素直になれないけど、こんな時にだけ甘えてばかりだけど。
俺の傍にいてください。

俺の言葉を聞いてから高野は微笑して先程より強く俺を抱き締めた。
「嫌だと言っても、もう離してやんねぇーよ。覚悟しとけ」
「っ・・・・はい」

Fin

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