他作品小説

□兎か鴉かハイエナか
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阿武兎「なあ」
神威「何?」
阿武兎「機嫌直せよ」
神威「別に機嫌なんて悪くないけど」
阿武兎「ハァ…見てりゃ分かるってのに」
原因は分かってる。
どの辺りから不機嫌になったか鑑みれば一目瞭然。
先程潰した星の者に「お前なんて存在価値の無いハイエナだ」ーーそう死ぬ直前に言った奴がいた。
ソイツの命を消すのにいつもより力が入っていたし、その後から何処と無く不機嫌なのだ。

父を殺すのに失敗し、父の好敵手の元へ弟子入りした後、宇宙海賊・春雨に入ったなんて物騒な経歴を持つ神威だってまだ子供。
多少なりとも気になってしまうんだろう。
なら大人の俺がフォローしなきゃな。
阿武兎「俺の親の話して良いか?」
神威「は?」
阿武兎「ある時俺の父親は俺に対して鴉になれと教えた」
神威「意味分かんないよ、阿武兎」
阿武兎「俺だって最初はよく分からなかったさ。でそれを聞いた母親が『鴉なんてなるな、夜兎らしく兎になれ』と言った訳だ」
母親が言いたい『兎のように高く飛べ、鴉の様に人が捨てたゴミを漁るような汚い生き方はやめろ』という事は分かる。
しかし兎なんて可愛い生き物になる位なら鴉の方がよっぽどマシだ。
父親は母親の居ない所で『鴉はゴミを漁ってでも懸命に生きるだろう。だから俺は鴉になって欲しい』と言った。
だが俺は兎程では無いが鴉も嫌だった。
人がゴミを捨てるのを待たないといけない上、いつもギリギリ生きるのは嫌だからだ。
多種族との戦闘でギリギリの命の取り合いなら大歓迎だがな。
ただの比喩表現なのは分かる。
だが俺は強い反発感を覚えた。
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