黄色のサッカーlove

□◇第2章◇
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――チュンチュン…

『…ん……』


小鳥の囀り声で目覚めた沙由梨


『…あれ、此処は?』


辺りを見回すと、見覚えのない空間が広がっていた
起きたばかりだからなのか、脳が上手く働かない
しかし、近くに積まれた段ボール箱のおかげで直ぐに脳が働き出す


『(そっか……あたし…一人暮らしを始めて……そうだ!…虎太君とサッカーをしたんだ…)…それから…っ!!…あ、たし…血を見て……っ…』


昨日の事を思い出し鳥肌が立つ


『(…その後の記憶が、ない……虎太君に…嫌われちゃった、かな……?)』


そう思うと胸が苦しくなった
この町に来て、初めて出会った友達なのに


『…あの後…どうやってあたしは此処に……』

「お前が気ぃ失ったから、俺が運んだ」

『!?…虎、太君…』


彼女の呟きに返事をしたのは虎太君
振り返ると、彼は彼女のすぐ横に立って居た




正直、とても怖い

彼に嫌われたのではないか、と考えてしまう
もう、誰にも嫌われたくなかった
誰かに嫌われるのは……怖くて、辛くて、とても寂しくなるから


「…大丈夫なのか」

『…っ!…う、うん…平気』

しかし、彼は嫌うどころか、自分のことを心配してくれていた
普通に接してくれる虎太君
それが、言葉に表すことができないくらい嬉しい


『…あ、の………っき、昨日は…ありがとう……っそれと…ごめん、ね』

「…別に……けど………何で、あんな風になった?」


そう聞き返してきた彼の目は真剣で、一瞬時が止まったように思えた
でも直ぐに現実へと引き戻される


…彼の疑問は当然の事だった

話さなければいけない
思い出したくもない……あの頃の出来事を
だけど………虎太君には、知っておいてもらいたい
……誰かに、聞いてほしい


初めて、そう思った




緊張で体が小刻みに震える
上手く伝えられる保証はどこにもない


それでも……


『…あ…たし、…お母さんから………っ暴力…受けてたんだ……』

「!?…っ悪ぃ…『っいいの!…虎太君には…知っててほしい、から』


彼女がそう言うと彼は驚きながら小さく頷いて、…彼女の手を優しく包み込んだ


(…!?…ま…さか…、…震えてるの…気づいて…)




彼には話しておきたかった………








暗くて、重くて………逃げることのできない、彼女の過去―――――――…………






ポツリ、ポツリと…
沙由梨は話し始めた





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