黄と赤の瞳

□第2章
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あたしは飛影と別れた後 その場に立って思考を巡らせていた


小雪『…う〜ん、どうしよう…』


…生活する場所がないのだ
それに食べる物だってない
その辺に生えている草の中には、食べられる物もあるのかもしれないが…
どれが食べられるのか全く分からなかった


小雪(…というかさっきまで あたし死のうとしてなかった?)


そう…あたしは飛影に助けられる前、死のうとしていた
なのに何故今は 生きる為の思考を巡らせているのか…


小雪(…飛影の…影響…なの…かな?)


飛影が助けてくれたから…
そうとしか考えられなかった
この世界で、生きたい
そう思ってしまう自分が居た


小雪(飛影と、一緒に暮らしたい…って言うのは…我儘、だよね…)


今まで両親に拒絶され 甘えたことがなかったあたしは 人への甘え方を知らない
どこまで甘えてもいいのか……その程度が分からない


小雪『………飛…影……』


無意識の内に彼の名前を呼んでいた


飛影「何だ」


瞬間、後ろから声が聞こえて来た

小雪『!?…ひ…飛影!…いつから?!』


声の主は飛影だった。


飛影「…今だ」

小雪『(…何かあんまり答えになってないような…)…そう、なんだ…』


急になんだか 恥ずかしくなった
まさか呼んだ本人が直ぐ近くに居るとは……
とにかく恥ずかしさを紛らわそうと、頭をフル回転させた


小雪『…っそ…それで…えと…どうして此処に?』


飛影は一度森の中へ行ったのに戻って来た…という事は用事があるのだろう
なにか忘れ物でもしたのだろうか、と辺りを見回すがそれらしいものは何もない
そして、当の本人は黙り込んでしまった


小雪(あ…あれ?!…あたし…何か言い方おかしかった?)


直ぐに思い起こしてみるが、特に変なところはない…と、思う
飛影が黙ってしまったのは何故か
そのことであたしの頭はいっぱいになった
理由がわからなくてなんだか無性にむず痒くなる


小雪(………気のせいかな?…なんかさっきから、心臓が妙に煩いような…?ッな…何かの病気とか!?)


さっきから自分の胸の鼓動がとても煩かった
この沈黙のせいだろうか?
しかしこんなことは初めてであたしは少し動揺してしまう

内心冷や汗を流しているとさっきまで黙っていた飛影が唐突に………


飛影「…来い。」


と一言、言い放った


小雪『…え?…どういうk……っ!!』


あたしが理由を聞く前に、強く腕を引かれた
そしてあたしの身体はクルリと反転して、温かい物に包まれた
何処かで感じたことのあるその温かさ
気付けば飛影の顔がすぐそこにあった。
それは横抱き…いわゆる お姫様抱っこで…


小雪『っ?!!!ちょっ…飛影!…こ、この態勢はッ!!』


恥ずかしさに耐えかねたあたしは飛影に抗議しようとしたが…


飛影「?何か問題があるか」


飛影に意味が分からない…と言う様な顔で言われて何故か
キュンッとしてしまう。


小雪(?…何…今の“キュンッ”…って…。ていうか…顔…熱い……)


などと初めてのことにいろいろと戸惑ってしまい、タイミングをのがしてしまったのだった
諦めたあたしは


小雪(…っまぁ…いっか!!)


と開き直ることで全てを放り投げ、その間に飛影はすでに動き出していた
普通とは比べ物にならないくらい速く走るのであたしの顔にはとても強い風が吹き付ける
しかし、それがどこか爽快で、また飛影の腕の中にいると思うと、とても安心した



―――――――――――――――
―――――――――



飛影「……降ろすぞ」


暫く走っていた飛影が止まったのは岩壁の目の前だった


小雪『…洞窟…?』


しかし、そこには大きな穴が開いており大きな洞窟が広がっている
飛影はそこにあたしをゆっくりと降ろしてくれた
今まで感じていた温もりが消え少し寂しくなるが、今はそれより目の前の洞窟が気になって仕方なかった


小雪『…どうしてあたしを此処に?』


飛影「貴様をこの森に連れて来たのは俺だからな……その辺で野垂れ死なれても迷惑だ…面倒くらいならみてやる」


飛影はそう言って顔を背けた


小雪『(…そ…それって…)…一緒に暮らして良い…の…?』

飛影「フンッ別に貴様の為ではない」


と言って、完璧に向こうを向いてしまった


小雪『……っ』


あたしにはそれが肯定している様にも、照れ隠しの様にも見えた


――ドキンッ

小雪(…っあ……またこの感じ…ホントに…どうしちゃったんだろ
さっきから…ずっとドキドキしてる…な、何で?)


あたしは自分の反応の意味が分からなかった
自然と高鳴る鼓動と、どんどん上がる体温に戸惑う事しかできない


小雪『(…っと…とりあえず…お礼!)…っひ…飛影!!…ありがとう!』


そう言って微笑むと飛影は


飛影「!…っ……ぁ、あぁ」

と短く返事を返した
その時のあたしは、笑う為に目閉じていた事によって、飛影がこちらを見て顔を赤くした事には気が付かなかった




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