黄と赤の瞳

□第1章
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ザワザワと木々がさざめく、深い深い森の中で一人の少女が佇んでいた
彼女の名前は市川 小雪
なぜまだ幼い彼女がこんなところに居るのかと言うと、少女の父親がそうするようにと言いつけていたからだった


小雪(ちゃんと待っていい子にしてたら きっとお母さん達だって…)

あたしを好きになってくれる


そう信じていた


――ガサッ

小雪『?』


不意に 少女の背後から草の動く音がした
振り替えって見て見れば、そこには見たこともない生き物が、涎を垂らしながらこっちを見ていた
それは、どう見てもこの世のものではない


――ゾワッ

小雪(逃げなきゃ!!)


彼女の中で警告音がけたたましく響き、それに従い死に物狂いで家の方に走る
父親との約束なんて気にしている余裕はなかった
後ろからはさっきの奴が追い掛けてくる
追い付かれたら、自分は死んでしまうと心のどこかで確信していた



…怖いよ

……助けて

………追い掛けてくる

…………ッ誰か助けて!!



どのくらい走ったかはわからない
気が付けば家の前まで帰ってきていた


小雪『………ッただ、いま。』


少女がそう言ってドアを開くと、彼女の父親と母親が此方を向く
しかしその瞳は、愛する娘を見るそれではなかった


――ジロッ


その瞳は、まるでなにか汚いものを見ている様だった


母「ちょっと!!捨てて来たんじゃないの?!」

小雪『…え?』

父「捨てたさ!ちゃんと山奥にっ!!」

小雪(捨て…た?)


自分の目の前で飛び交う2人の言葉に、頭がついていかない彼女を他所に、ふたりの言葉はヒートアップしていく


母父「「何で戻って来たの/んだ!!」」

小雪『…っ!!』

父「お前みたいなバケモノは消えろ!!」


――バシッ


小雪『!!ぃ、たッ………。』

母「気持ちの悪いバケモノめっ……早く出て行け!!」


右頬に鈍い痛みが走る
数秒経ってから、それが父に殴られたためだと悟った


――バッ


少女は家を飛び出した




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