黄色のサッカーlove

□◇第9章◇
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『じ、地味……』


あれから家に帰って着替えをし出した沙由梨
彼女は、かれこれ一時間、鏡の前で悩んでいた

こんな風にみんなとワイワイしたりするとは思っていなかったので、引っ越す際何も持ってきていなかった
つまりは……服がないわけだ


『どうしよう……』

―――ピンポーン


服が決まらず困っていると、家に呼び鈴の音が響き渡った
慌てて時計を見るとエリカちゃんとの約束の時間になっていた


『あぁ!……っもう、なんでもいいや!!』


その辺にあった服を適当に鷲掴んで着込む
辺りに散乱した服はそのままにして、玄関の扉を開いた


『ごめん、お待たせ!……あ、玲華ちゃん!』

「こんにちは」

「全然待ってへんで!というか、沙由梨ちゃんって、降矢君達の隣に住んでたんやなぁ……」

『へへ、隣があれだと、大分小っちゃく見えるでしょ?引っ越して来た時凄い驚いたよ』


扉の鍵を閉めて、ふたりの方を向く
彼女の言葉を聞いたふたりは苦笑いを零す
ほんなら、行こっか!
そう言ったエリカちゃんの後に、玲華ちゃんとふたりで続いた

ふと、隣を歩いていた玲華ちゃんの視線が自分に向けられていることに気付く


『どうしたの?……やっぱり服、おかしいかなぁ?』

「ううん!そうじゃなくて、沙由梨ちゃん凄く可愛いなぁと思って……」

『へ?』


彼女は笑いながらそう呟いた
つられて、前を歩いていたエリカちゃんも此方を向く

沙由梨が着ているのは淡い水色をした、薄い生地のワンピース
無駄にフワフワとしておらず、それがかえって彼女の元々の細さを強調させる
また、その上から黒のカーディガンを羽織っていたので尚更だ


「ほんま!ふたりともめっちゃ可愛いで!」

「あ、ありがとう……」

『エリカちゃんもね?』

「当たり前やん!!」


そう言ってエリカちゃんを見て、3人で笑いあう
暫く歩いていると、“どんまい”という看板の立てられた焼肉屋さんが見えて来た
一風変わった店の名前だなと思いつつ、その扉を開ける


「こんにちわ〜」

「お邪魔します……」

『……失礼しまーす』


中は既に飾り付けがされており、とても花やかだった
あたし達を見ていらっしゃい!と言った翔君
その姿は結構様になっていた
扉を閉めて中に入る


『そうそう、虎太君とかは、用事があるから欠席するって言ってたよ?』


あたしの台詞に反応したのは、奥に座っている見知らぬ男の人
……誰だろう


「それにしても、残念やわぁ〜…絶対沙由梨ちゃん見て面白そうな反応見せる、思ってたのに……」

「エ、エリカちゃん……」

『?どういう事?』


少しすると、他のみんなもどんどん入ってきた
どうやらそれぞれの親も来たらしくて、直ぐにお店の中はいっぱいになる
大体揃ったところで、代表に言われて花島コーチが立ち上がった
どうやらみんなに向けて挨拶をするようだ
ひとりずつ、乾杯用のジュースが配られる


「え〜、今日はお忙しい中……

――ガラガラガラッ


コーチの挨拶を、扉の音が遮る
驚いて視線を向けると、そこには綺麗な女性が立っていた


『……誰?』

「えっと……どちらの親御さんですか?」




「玲華ちゃん!!」

「っママ!?どうしてここに……!」


どうやら、玲華ちゃんのお母さんだったらしい
そのことに気が付いた玲華ちゃんは、楽しそうに笑っていた顔を真っ青にさせた





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