黄色のサッカーlove
□◇第4章◇
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今は丁度練習の間の休憩時間
沙由梨はひとり木陰で休んでいた
『…はぁっ…はぁっ…』
初めてのサッカーの練習に、慣れない彼女の身体にはかなりの疲労感が襲っていた
乱れた息を直していると、いつの間にか虎太君が自分の目の前まで来ていた
「……、…ん……」
彼は自分に飲み物を差し出してきた
『え?…っでも…それは…っ虎太君のじゃ…』
息がなかなか元には戻らない為、言葉が途切れ途切れになる
それに、虎太君が持っているのは、黄色の水筒だ
十中八九、それは彼のものだろうし、事実それは当たっていた
しかし、彼がその手を引っ込める様子伺えない
それどころか、絶対に受け取ろうとしない彼女を見て、眉間に皺を寄せた
「水分取ってねぇだろ」
『っ何で…それを………』
確かにあまり水分を取っていなかった
そもそも、こんな事になると思っていなかったのだから水筒なんか持ってきてすらいない
そのため、取り合えず水道水をちょこっと飲んだだけだ
「見てればわかる、いいから飲め……倒れるぞ」
そう言って更に水筒を差し出してくる虎太君
倒れたら、それこそ多大な迷惑を掛けてしまうことになる
彼女は、その手を伸ばした
『…ごめんね、ありがとう』
あたしが水筒を受け取ると、彼は納得したように微笑み、みんなの所へ戻っていった受け取った水筒の蓋を開け、中身を少しだけ流し込んだ
冷たいお茶が流れていくのがわかり、ヒヤリとしたそれが心地いい
少し、強めの風が吹いた
――サァァーーーーー…
『…ありがとう、虎太君』
彼女が発した言葉は、その風に溶けて誰にも聞かれることはなかった
『(ハァ…それにしてもあたし…こんなんで着いて行けるのかな…)』
自分だけ下手な気がする
現に今向こうに行ってしまった彼は、あまり息切れをしていなかった
今までずっとサッカーに打ち込んできた彼等とは、天と地ほどの差がある
もっともっと、練習が必要だ
『(自主練…するしかない、皆よりたくさん練習して……迷惑だけは、かけたくない!!)』
そう思って立ち上がった時だ
直ぐ近くで、砂と靴が擦れる音がした
「瑞嶌先輩」
彼女の前に姿を現したのは、田中君
『…なぁに?』
自分のことを疑うような、ジトリとした視線と、険しい表情
あまりいい雰囲気ではないことくらい、誰にでも分かる
彼は少し間を開けた後、口を開いた
「…瑞嶌先輩は、初心者っすよね…?…本当に、虎太先輩と同じくらいのシュートが蹴れるんっすか」
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