黄色のサッカーlove

□◇第2章◇
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◇Side虎太


虎太は、瑞嶌を抱きかかえて彼女の家に向かっていた
瑞嶌は今日俺の家の隣に引っ越して来た同い年の少女
自分が言うのも変だが、瑞嶌はかなり可愛いのだと思う

太陽の光を反射して、キラキラと透き通っているかのように見えるセミロングの茶色い髪の毛
同じ色で、大きくクリッとした瞳は周りの目を引き付けた
そして、服の袖などから時折覗く真っ白く、ほっそりとした手足が彼女のスタイルの良さを窺わせる

こいつが自分の家に来たとき、正直かなり焦った
俺はあまり女に面識がない
大して興味もないため関わっていなかったからだった

しかも彼女は俺にサッカーを一緒にしないかと言って来た
その時の彼女の目は、何処か寂しそうで…俺は断ることが出来なかった

最初は初心者と聞きちょっと困った
初心者が相手なら手加減がいるからだ


……しかし、予想外のことが起きた

彼女がパスとして蹴ったボールが、自分のシュートと同等…いや、それ以上だったからだ

「(女であんな弾丸みたいな球、蹴るやつは初めてだ…)」


面白い反面…悔しさが湧きあがる
俺はサッカーが好きだ
小さいころから練習して、ずっと続けて、ここまで上手くなった
だが、こいつはサッカー初心者のくせに、俺とそんなに変わらないレベルのキック力を見せつけて来た
まさにそれは、自分よりも遥かに大きな天賦の才――――……


「(っくそ!……なんでなんだ?!)」


自分の中に沸いたモヤモヤとするその気持ちを振り払うため、俺は瑞嶌をミニゲームに誘った

2時間くらいして瑞嶌がギブアップした
どうやら体力的には自分が勝っていたらしい


「(…結構、上手い…コイツ、プレデターに…入れるか?)」


プレデターとは、彼の入っているサッカー7チームのチーム名の略だ
正式名称は、桃山プレデター

つい最近解散し、新たに作ったばかりで人数が足りていなかった

コイツなら強いし…そう思って誘ったら(詳しい事言ってねぇけど)オッケーされた



その直ぐ後の事だ

瑞嶌にある変化が起きたのは――――……


瑞嶌が俺の膝から出た少量の血に過剰に反応する


「(……様子が、おかしい)」


そう思い声を掛けるが全く聞こえていない
そして、瑞嶌はそのまま気を失ってしまった


「(どういうことだよ……さっきまで普通に話してただろ)」


彼女をこのまま放って行く訳にもいかず、俺は瑞嶌を抱き上げ、歩き出した


そして冒頭に至る


「(……軽、コイツ……普段何食ってんだ)」


彼女は異常なほど軽かった
まぁ、そのおかげで苦労せずに済んだのはよかったが
暫く歩いていると、彼の家と真新しい家が見えてきた
ついさっき、彼女と待ち合わせた玄関
表札には瑞嶌と書かれている

手がふさがっているのでとりあえず声をあげた


「……すいません」


しかし、誰かが出てくる気配はない


「(誰も居ねぇのかよ……)」


そう思ったため、彼女の身体を片腕と膝で上手く支えながら、ドアノブに手を掛ける


ガチャッガチャッ


…案の定、鍵がかかっていた


「(……仕方ねぇ)」


あまり気は乗らなかったが、瑞嶌のポケットに手を入れる
すると、目当てのそれは簡単に見つかったので、直ぐに鍵を開けて中に入った

ずれそうになる彼女を再度しっかりと抱えなおして、部屋の奥へと足を進めた
リビングを超えた先の扉を開けてみると、そこが寝室のようだ


「(コイツ………まさか一人暮らし?)」


床に置かれたままの小さくて数の少ない段ボール箱
ひとり分しかないベッドと、必要最小限の家具類
直感的にそう思った

とりあえず瑞嶌をベッドに運んでゆっくりと降ろす


「(…涙の、跡)」


寝息を立てている彼女の頬に、うっすらとのこる涙の跡
俺はそれをふき取り、近くのソファーに横になった
長いことミニゲームをしていたからか、急に眠気が襲って来る


「(どうせ明日休みだし…後で連絡入れたらいいか)」


そう思い、彼はそのまま意識を手放した





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