荒神狂想曲

□遠征へ
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「アリアさん、お帰りなさい!支部長がお呼びです」
「ただいま。了解した」
三日家で部下のわがままに付き合い、アナグラに戻ってきた。相変わらずの騒がしさで、カノンが作ったという菓子を一つ貰って支部長室へと向かった。
「シックザール様、アリア・ガルシア上等強襲兵ただいま参りました」
『入りたまえ』
「失礼いたします。...何かご用で?」
「もう体調は良いのかね?」
「はい。お陰様で」
「そうか。...今日君を呼んだのは、極秘任務についてほしいからだ。オペレーターによれば、君は朝から晩まで外でアラガミを相手にしているというじゃないか」
「シックザール様、説教なら帰りますよ?」
「いやいや、実力を買っているんだ。...そうだな、一度遠征へ行ってみないか?遠征といっても、君の場合はいつものように遊撃し、更に遠くへと足を運ぶだけでいい」
「どうしてまた?」
「エイジス計画は知っているな?それの建築の完成に特別なアラガミのコアが必要になった。君にはそのアラガミを見つけ出し、コアを摘出してほしいと思っている」
「ふむ、適材適所という事ですか」
「そうだ。受けてくれるか?」
「喜んでお受けいたします。...なら、バンを一つお借りしても?」
「ああ、申請しておこう」
シックザール様が呼んだのは私に遠征へ行ってもらうためらしい。まだ上等兵だというのに、単独行動をしていた事を買われた。
エイジス計画に必要な特別なアラガミのコア...。これは骨が折れそうだ。

支部長室から出てエレベーターに乗る。そこで、隣にリンドウ大尉がいるような錯覚に襲われた。これを機にエイジスへ潜れ。そう言われた気がした。
「エイジス島...」
空母、廃寺からいつも見えていた。それの手伝いを頼まれるとはね。
「ああ、ヒバリ。禁忌種の討伐依頼はないか?」
「空母にてスパルタカスの反応ありです」
「ならそれに出て、そのまま遠征へ行く。ヘリはいい。バンで行く」
「...分かりました、お気をつけてください」
「フ...二度と同じ轍は踏まんさ」

「と、豪語したは良いが流石禁忌種だな」
活性化したスパルタカスの攻撃をアクロバティックに避けながら冷や汗をかく。何せあの巨体がちょこまかと動き回り、近がダメなら中遠に切り替えてみればやはりクアドリガと同種なだけあってミサイルをぽんぽんと放ってくる。
「面倒...実に面倒だわ...」
一つ小型のミサイルをまともに喰らい、岩へめり込む。せり上がる血を吐き出し、ギリギリと奥歯を噛み締めた。こんな所で死んでられない、と。
「さっさとくたばれ...!!」
こちらへと向かってくるスパルタカスに、ジーナ直伝精密射撃で弱点を貫く。一瞬ひるんだ隙にバスターへと切り替え、懐に潜り前面装甲を打ち破る。ダウンしたスパルタカスにチャージクラッシュを何度も見舞い、動かなくなるまでがむしゃらにバスターを振り回した。途中から何をしていたのか何も覚えていない。気付けばスパルタカスを捕食し、コアを回収していた。
「...まあ、いいか」
恐らく、全身に溶け込んだアラガミが暴走でもしたのだろうと踏み、自身に害はないと信じた。少し目眩がするだけで、後はどうもなっていない。サカキ博士に報告するまでもない。
「もう夕方か。別の場所へと移ろう」
遠くでアラガミの声を捉え、急いで隠して停めたバンへと向かった。
さあ、どこまで放浪しようか。

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