荒神狂想曲

□嫌な予感
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「アリア、上等強襲兵に昇格だ」
「!?...光栄です?」
無事初陣から帰ってきたあの日から数日。アリアは度々ソーマを伴わずに一人でミッションに行くことが多くなり、たまにジーナやカノンを誘って行くようになった。
そんなある日、ぼーっとソファに沈んでいたアリアの横から姉上が声を掛けると盛大に驚いていた。普段はビシッとした物言いだが、なんだか今日は脱力してる風に見える。
ちなみに俺は真正面で観察してるぜ。
「今後も期待している。いつか新人を送ることがあるかもな」
「腕立てから鍛えた方がいいでしょうか?」
「ハハッ、そこまでしなくてもいい」
そして、冗談を言うようにもなった。いいことだ、うん。
「で、リンドウ大尉は何か御用で?」
「ありゃ気付いてたか」
「気配で分かります」
おおっとこれは恐ろしい。
「んー、今日お前さんは脱力してるなあーっと思ったんだ」
「ふむ」
「いや、違ったら違うって言ってくれればいいんだぞ?」
「いえ、合ってますよ。寝不足が祟ってるだけです」
「夜通し珈琲飲んでたらそりゃ寝不足にもなるわ」
「起きておきたくて起きてるわけではないんですがね」
「誰かのイビキでも聞こえてるのか?」
「いえ、ただの悪夢です」
「ただの悪夢だったら寝直せるだろ」
「毎日同じ夢なんですよ。物心ついたときからずっと見てる夢です」
何だそりゃ。ずっと同じ夢って...。気味が悪いな。そりゃ寝たくもなくなるわなあ...。
「まあ、嫌な予感もするので神経が過剰になり過ぎて身体が疲れてるというのも理由の一つですね」
「嫌な予感?」
「誰か...いなくなりそうなんです」
...誰かいなくなる?ここでは日常茶飯事に近いから今更って感じなんだけどなあ。
「誰かって?」
「...第一部隊の誰か、です」
...。
「杞憂だと嬉しいのですが...リンドウ大尉のその顔、思い当たる節でも?」
「いや...。あー...そうだな、お前さんには話しておいた方がいいかもな。よし、ミッションに行くか。そこで話す」
「了解いたしました」
そういえば、アリアは支部長と仲が良かったのか?いや、ソーマがあれだからアリアも...。うーん?よく分からんなあ。


今回のミッションは空母だ。標的はコクーンメイデンだ。あいつらってよく群生するんだよなあ...。
「空母はなんだか血が騒ぎますね」
「軍人としてか?」
「ええ、潜入捜査の訓練に最適かと」
「ハハッ!でも、アラガミが来るから部下は連れてくるなよ?」
「そんな危ないことしませんよ」
「戦力が激減するもんなぁ。...よし、行くか」
「ええ、今日も優雅にステップを踏めそうですね」
おっとこれがユウの言っていた戦闘モードか。確かに舌舐めずりしながら言う言葉じゃねえな。
「まず資材回収ですね」
「おう、そうだな」
のろのろと資材を回収し、だらだらとコクーンメイデンに突っ込みに行く。
おおっと、アリアがいい足踏みで神機を振りまわしてるぜ。これか、これがユウが震えながら言っていたステップか!
「(ったく、どうやったらあんなアクロバティックが出来るんだぁ...?)」
跳んで跳ねてくるりと回って、フィニッシュにチャージクラッシュ...全部練習してきたみたいに軽々とこなす。ま、綺麗っちゃあ綺麗なんだ。アラガミを潰していなかったらな。
「リンドウ大尉、アラガミの掃討を完了いたしました」
「おう、ご苦労さん。おっと、そういやアリアは無線があるんだっけか?切ってくれるか」
「はい...。で、お話とは?」
「んー...そうだな、どう切り出したらいいかねえ...。...お前さん、支部長と仲は良い方か?」
「いえ、そこまでは...。あまり会えませんし、何より何を企んでいるかよく分からない、狐に包まれたようなお方なので、どちらかというと苦手の分類ですね」
「ふむ...」
「リンドウ大尉、今の質問だと、このお話はシックザール様に関する事、で宜しいでしょうか?」
「ああ、そうだ。察しが良くて助かる。...あの島が見えるか」
「ええ、ドーム状の」
「あれはエイジス島だ。今は詳細を言うわけにはいかないが、あれは支部長が作ったものだ」
「シックザール様が」
「...だが、俺は支部長が何かを隠している風に見えるんだ。だから、アリア、協力してくれないか。ソーマはこれを知ればすぐに支部長に掴みかかって事がややこしくなる。サクヤやコウタ、アリサは巻き込めない。...お前さんも本当は巻き込むつもりはなかったんだが、軍人で、しかもソーマと“同じ”だろ?」
「...なぜそれを!」
「ソーマに聞いた。無理矢理聞いちまったんだが、まあ許してくれた」
「...そうですか」
「で、どうだ?手伝ってくれないか...?」
「...そうですね、半分身内ですし、シックザール様を止めれるなら、いくらでも。ですが、リンドウ大尉」
「ん?」
「くれぐれも、背後にはご注意下さいね」
「ハハッ!そんな暗殺じゃあるまいし」
「(...分かりませんよ。嫌な予感、あなたから漂っているのですから)」
まあ、ともかくアリアが味方についてくれたら頼もしい限りだ。

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