荒神狂想曲

□初陣
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俺がアリアの教官に指名されてから数日が経った。元々の素質からか、神機の扱いにすぐ慣れたようだ。もう戦場に出ても恥ずかしくはないだろうな。
「アリア、実地訓練に行くぞ」
「えっ、もう!?」
俺の言葉に驚いたのはアリアではなくコウタだった。こいつも初陣は早かったが、何に驚いてるんだ?
「初陣、という事ですか」
「ああ。ダミーじゃあ物足りねえだろ。本物でお前の力を出せ。フォローはする」
「待て待て、ソーマ。いくら何でもそれは危険じゃ...」
「そうよ、ソーマ。あなた達あんまり寝てないんでしょ?夜中ずっと珈琲飲んでるって、ジーナが言ってたわよ」
面倒くせえ。何に心配してんのかは大体察しがつく。寝不足で判断力が鈍るとか何とかだろ。
「問題ありません。幼少期からずっと早起きしてましたから」
「いやそういう事じゃないんだがなあ...」
「ねえ、ソーマ。俺も行っていい?」
「あ?」
「ほら、人手が多い方がさ、フォローしやすいじゃん?」
「...アリア」
「私は構いません。教官殿の判断にお任せします」
「...勝手にしろ」
「わーい!じゃあヒバリちゃん、俺とソーマとアリア、出撃するからー...」
全く、面倒だ。俺達に関わるのはやめてほしいんだがな。アリアが死ぬ事はないし、俺も親友を手放すつもりはない。
...ま、そう思ってるのは俺だけかもな。

「なー、ソーマ」
「何だ」
「教官としてさ、アリアに命令出しといたら?リンドウさんみたいに」
ヘリの中、ユウがアリアに聞こえないよう小声で俺に声をかける。そんな事しても聞こえてるだろうがな。
だが、命令か。無難に無理はするな、でいいか。
「ほら、ソーマって素直じゃないから死ぬなって言えない"っでえ!!痛いソーマ!!」
「馬鹿野郎、こいつは死なねえっつってんだろうが。こいつも部下がいるのに死ねるわけねえだろ」
「おや、よくお分かりで」
「あ、なあなあ、アリアの軍隊って普段何してるんだ?」
「主に人民の安全を守る事を最優先に動くよう指示しています。パトロールをして喧嘩の仲裁や手助け、アラガミの侵入時には人民の誘導を行っています。それでもやはり出来ない事は多いので、課題は増える一方ですね」
「へ〜。結構しっかりしてるんだ」
「まあ、このように皆がきびきびと動くようになったのは私が隊長になってからですね。全隊長は楽をしすぎていたのでお灸を据えて差し上げたらお前がやって見せろと言ってきたので隊長に昇格したまでですがね」
「ぐ、具体的にはどういう風にお灸を据えたの...?」
「少し一緒にステップを踏んだだけです。決して瀕死に追い込んだわけではありませんから」
...瀕死。こいつ、怒らせたらそんなヤバいことされんのか。
「ヒィ」
ほらみろ。ユウが瀕死のオウガテイルみたいに震えてるじゃねえか。
「着いたようですね。...楽しいステップを踏めそうです」
...その台詞、舌舐めずりしながら言う事じゃねえだろ。

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