荒神狂想曲

□変態は帰ってどうぞ
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サカキ博士のメディカルチェックが終わったらしく、目が覚めると自室らしき部屋にいた。ベッドの隣にある机には、元いた家の荷物の包みが転がっていた。
「整頓しないと」
中にはまだ読み終わっていない父様から借りた書物、着替えーーほとんどがシャツで、一枚だけ苦し紛れで入れた厚手のパーカーが窮屈そうだったわーーそして家族アルバム。三人で撮った写真はないけど、私がまだお腹にいた頃の母様の写真がいくつもある。どの顔も幸せに満ちていて、カメラを構えている父様に向かって笑っている。
「一緒に、お話したかったわ」
アルバムをベッドの上の棚に置いて、着替えを如何しようかと悩む。下着をそのまま棚に置くのは恥ずかしい。かと言ってダンボールに入れっぱなしはちょっと...ねえ?
と悩んでいるときに、部屋の扉が開いた。どうやらスライド式の扉みたい。
「メディカルチェック、終わったみたいだな」
「ええ。...ね、下着ってどうしてるの?」
「下着?...ああ、困るのは分かるが...晒せ」
「!?」
「そんな顔するな。収納場所なんか無いに等しいからな」
「下着と聞いて」
「リンドウはまだ来るなと言っただろう。年頃だぞ。ソーマを引き連れて来るな」
「離せリンドウ...!」
リンドウって変態?
「年頃が恥じらうとこも好きだからな、来ちゃった」
「変態は帰ってくれませんかね」
「アリア辛辣!!」
「いいぞもっとやれ」
「ソーマくん!?」
オープンスケベってやつね。父様もアルコールが入ったら母様の体の隅々までを喋りまくっていた。かなり引いたけど、次の日に部屋の外で土下座していたのを鮮明に思い出す。
「なんだなんだ?なんか面白い事でもあるのかリンドウ?」
「お、ハルじゃねえか!さっき新人来てさ、下着見られるの恥ずかしがってて可愛いのなんの」
「マジで!?...おお、見事なまでのぜっぺはぶっ!?」
ツバキと呆れていたら追加でまた一人やって来たが、失礼な事を言おうとした気がしたから反射で飛び蹴りをお見舞いしてしまった。
「今...何て言おうとしたのかしら...?」
「!?」
「確か、絶壁って言おうとしたんじゃないの?」
「い、いや、いいと思うぞ!ほら、人それぞれだしさ!これからでっかくなるかも知れないし!な!...っだから!その、足を、退けてっくれませんか!!!」
床に伸びたその人の股間を踏んずけて、全体重をかけたら面白いくらいにのたうちまわってくれて気分爽快。
「ところでお名前は?」
「真壁ハルオミです...」
「よし、特別に真壁で呼んであげる」
「えっハルオミ♡じゃないのか!」
「え?」
「ごめんなさい」
「リンドウも分かってるよね?」
「すまねえ!!」
「分かれば良いのよ、分かれば」
「アリア、ソーマは何もしてないぞ」
「知ってるわよ。ソーマと殴り合いなんてしないわ」
「ソーマズルい!」
「くっそ、ソーマパッとしねえのに!!」
「バカな事してる奴が悪いんだろ」
「「その通りです!」」
取り敢えずリンドウと真壁はソーマに任せて、私はツバキと服を畳んだりした。
ツバキはリンドウと二人っきりの家族らしい。長いこと二人だったから、家事全般こなせるみたい。服を畳む手際も良かったしね。

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