戦勇。×アビス

□盗賊への襲撃
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しばらく3人で話しながら歩いていると突然木々が揺れ始めた。
「随分と風が強いのね」
「何だよビビらせやがって…。
何か居るかと思ったぜ」
「はは…でも、木に登る暇がある人なんて居るのかな…」
アルバが揺れている木を見つめていると今度は植木が思い切り揺れた。
「迷惑なもんだよな〜」
「…いえ、違うわ」
ティアがロッドを構えて戦闘態勢をとる。
「気をつけて。何か居るわよ」
「え?」
ティアの言葉にアルバは思わず植木を見る。
すると、植木の中から一匹の猪らしきものが現れた。
「どぅわ!?」
突然現れた二匹のうちの一匹の猪がルークに突進してきた。
ルークはそれを何とかかわす。
「ルーク!」
ティアとアルバがルークの身を案じる。
ティアはルークに怪我がないか駆け寄ろうと走り出す。
しかし心配してはいられなかった。
今度はもう一匹の猪がアルバに向かってきた。
猪がアルバにぶつかりそうになった瞬間、アルバの目の前にティアが立ち、譜術壁を張る。
「あ、ありがとう!」
「えぇ。
ルーク!大丈夫?」
アルバに危険がないことに安心したティアはルークに無事か尋ねる。
「大丈夫じゃねーよ!
おかげで膝すりむいたわ!!」
ルークが左膝を見ながら叫ぶ。
「待ってて!
…癒やしの力、ファーストエイド」
ティアが呪文を唱えるとルークの膝が光に包まれ、擦り傷の痛みがひいた。
「近くまでこないと擦り傷を消すことは出来ないの、今はそれで我慢して!」
「お、おう!」
ルークが立ち上がり腰に身につけていた剣を取り出す。
「にしても何なんだコイツら!」
ルークが一匹の猪に立ち向かい斬りつけながらティアに尋ねる。
「魔物よ!
どうやら私達を餌と思って襲いかかってきたようね」
「は!?冗談じゃねぇ!!」
「アルバ!貴方は下がってて!
どうやら武器を持っていなさそうだから何もなくて戦うのはいくら何でも危険よ!」
「で、でも!」
「良いから下がれ!
足手まといだ!!」
「!ご、ごめん……」
ティアとルークに促され、アルバは大人しく安全な所へ行く。
「ルーク!私の詠唱時間を稼いで!」
「ど、どーすればいいんだよ!?」
「私を魔物に近づけさせないようにしてくれればそれでいいわ!」
「偉そうにしやがって…わーったよ!!」
ルークが剣を構えて猪二体につっこんでいく。
「深淵へと誘う旋律……。
トゥエレィズェクロアリュオトゥエズェ」
ティアが先ほどとは違う呪文…正確には歌を唱える。
すると魔物達が眠り始めた。
「ルーク、今よ!とどめを!」
「おお?お、おう!!」
ルークは感心した後すぐに二体に剣を突き刺す。
「す、凄い……!」
戦いの全てを見ていたアルバが感嘆の声をもらす。
「へへ!俺にかかれば当然だな!」
「でもあの様子だと実戦は初めてのようね」
「わ、悪かったな!」
「いえ、初めてのわりには上出来だわ。
それと、ありがとう」
ティアにお礼を言われてルークはまた顔を赤くする。
「そ、そういえばティア!」
アルバが遠慮がちにティアを呼ぶ。
「何?」
「さっきティアが使ってた回復魔法?とか敵を眠らせてた奴…何?」
「譜術というものよ」
そう言ってティアがルークの膝に先ほどと同じ光を当てる。
するとその傷はすっかりと消え去った。
「す、すげぇ……」
「譜術?」
ルークがまた感心し、アルバは首を傾げる。
「えぇ。
音素(フォニム)を駆使して使う…魔法みたいなものよ」
「あれが譜術なんだ…」
「貴方、自分のことは分からないのに譜術や音素については理解してるみたいね?
音素って何?とかも聞いてこないし」
「あ、うん。知識は結構あるよ。
じゃあさ、さっきの歌って、もしかして譜歌?」
「譜歌ぁ?何だそりゃ」
ルークが話について行けずに二人に尋ねる。
「譜歌というのは、歌を使って相手を攻撃したり味方を回復させたりするものよ」
「はー…何かすげぇもんなんだな?」
「…凄い簡潔的ね。
譜歌が分からないということは音素も知らなさそうね。
説明するわ。
音素というのはこの世界のありとあらゆるものを構成しているもの。
音素は7つの属性に分かれており、
第一音素(ファーストフォニム)が闇、
第二音素(セカンドフォニム)が地、
第三音素(サードフォニム)が風、
第四音素(フォースフォニム)が水、
第五音素(フィフスフォニム)が火、
第六音素(シックスフォニム)が光、
そして第七音素(セブンスフォニム)。
この7つが存在するわ。
それらを駆使した譜術を使って戦う者を譜術士(フォニマー)と呼ぶの」
「じゃあティアは譜術士なんだな?」
「そうよ。
でも第七音素を使える人はとても少ないの。
だから第七音素を使える人は第七譜術士と呼ばれているわ。
私も第七譜術士の一人よ」
「はー…何かよく分かんねえ」
「第七譜術士が使うのは確か譜歌とか回復だもんね」
アルバはティアが第七譜術士だというのを納得するように言う。
「えぇ。
そしてルーク、貴方も第七譜術士よ」
「はぇ?俺が?」
「そう。貴方は私と超振動を起こした。
超振動は第七譜術士が第七音素をぶつけ合って起こる現象…つまり第七譜術士が二人居なければ超振動は発生しないわ」
「へ、へー?」
「ちゃんと聞いてるの?」
「いや、全然分からん!」
「……はぁ。話しても分からないなら時間の無駄ね。
行きましょう。そろそろ出口じゃないかしら」
そう言ってティアが向こうを指差す。
どうやらそこから抜けられるようだ。
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