刀剣乱舞

□遠い未来の彼方から
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警察署から歩いて15分
そこに境界線が張られている。
私達警察に与えられている腕輪型レーザーを当てることによって、二秒だけ人が通れるくらいの穴を開けられる。
そこから入りそこから出るのだ。


[今回、オペレーターを担当させていただきます。雪永と申します。全力でサポート致しますのでよろしくお願いします]


向こうに行く時は必ずヘッドセットを付けていく。通信機能を通して警察署に出た反応をオペレーターがこちらに知らせてくれるのだ。
例えば、前方10mに感染者出現、とか。


「よろしくお願いしますー」


「よろしくお願いします」


[では、早速穴を開けて中に入ってください。今、現在地付近に感染者は見当たりません]


「了解」


穴を開けて中に入る。
そこではこちら側、東ではあまり嗅がない匂い…腐臭がした。
それは四方八方から漂っていて、思わず吐き気をしてしまいそうになるほどに強烈だ。

見た目も日本だとは思えないほどに荒れていて、そこら中に瓦礫が落ちている。
建物も上の部分が大体は崩れていて、まるで戦争の後のようだ。


[無事に通り抜け成功です。…ここから真っ直ぐ1kmの場所に反応あり。人数は1人、ずっとその場所から動いていないようで、こちらに来る気配はありません。どうしますか?]


「その他にこちらへ来てくれそうな人は居ないんですよね?…ならそこへ行こうか、主。もしかしたら怪我をしていて動けないのかもしれない。それなら寧ろ好都合だしね」


「そうだね。…ってことで、先に進みます」


[了解しました]


「主。念のため、防護服を着ておこう」


「うん、そうだね」


いい忘れていたが、服装もコンピューターによって着ることができる。
デザインを選べばあとは勝手に自分にあったサイズのものに変更される。

歩きながら防護服に着替え、そのまま1km先まで向かうと、瓦礫の上に座る一人の男性がいた。


[男性の生命反応あり。…こちらに向かってくる様子はありません。]


「射撃してもいいでしょうか?」


[はい、可能です]


その言葉を聞き、男性から約15mくらい離れた場所から引き金を引く。
何の問題もなく放たれたそれは男性の腹の中で留まった。


「さて、これで後は効果が出るかの確認…」


ミッション完了かのように思われ、近寄っていく桜。
振り向いてこちらを呼ぶ。
…がその後ろでゆらゆらと影が揺れた。


「…桜!!!」


「え…」


叫んだと同時に桜を突き飛ばす。
そしてお腹に強い衝撃。


「かはっ…」


急に立ち上がった男性に殴られた主は気を失いそうになるが、なんとか持ちこたえた。


「主!!!」


[…?!男性の反応が一気に強く…?!何が起きたんですか?!応答してください!]


突然の出来事で応答する暇もなく、すぐに主の元へ駆け寄ろうとする桜だったが、男に突き飛ばされて3mくらい後ろの壁へ突き当たる。
ガクッと落ちた肩から、気を失ったことがわかった。


「桜…!」


自分の目の前にはさっきの男。お腹を殴られて倒れたことにより、立ち上がるのは少し困難。


そして目の前の男は私の胸倉を掴んで上に持ち上げた。
服が重量に耐えきれずに私の首を締め付ける。


「う…あっ?!」


ドクン


そのとき、大きく心臓が揺れた。
胸が焼けるように熱い。


「あっ…うあっ…!」


そして次の瞬間、私の体に光がともった。


[桜?!主?!応答してください!!…?!感染者が大量に…!!右側10m先に5人、左側50m先から10人、前方から8人…それ以上?!
…主の元へ集まっている?
主!桜!応答してください!…チッ、誰か!不自然な反応が!今すぐ応援を!!」


「うあっ…ひぃあっ…ぐぁぁ!」


光が放たれたと共に呻き声をあげながら離れる男。
しかしその顔は憎しみで満ちている。
そしてオペレーターの言う通り、前や後ろ、右とすべての方向から大量の感染者が集まってきている。


「(これはやばいなぁ…っていうか、この光と胸の熱。…私、感染しちゃった、かな…)」


感染者との距離5mと言ったところで一粒の涙と共に瞳が落ちた。


((あなたのようなお方を、ずっとお待ちしておりました。主殿))


…この声は、誰?
脳内に直接流れ込んでくる…


((私の説明は後ほど。今はお休み下さいませ))


その言葉に何故か安心して意識を手放す。
そしてそれと同時に再び放たれる光。
その温かな光を浴びた感染者たちは主に触れることなく次々と倒れていき、主の周りで立っているのはただの一人も居なかった。









20分後、先ほどオペレーターが要請していた援軍が到着した頃には、なぜかウイルス反応がない大量の人と、桜が倒れていた。
そしてただ1人、主の姿だけは見当たらなかった。








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