月読む電気石

□私の水先案内人
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「…どういう、こと」

「ん?」

「私を拾うと言うの?
私はポートマフィアの構成員で、五大幹部の一隅だよ」

「そうだな、気まぐれで手を差し伸べるにはリスクが高すぎる」


太宰は伸ばされた手を睨みつけた。
不可視の血に濡れた手だった。


「マフィアの幹部様を拾うほど大それた理由じゃない。
俺の夢が、こいつが望んだ生き方と一致していたから。
…悪い、お前に向けられた言葉を、勝手に聴いた」


バツが悪いと居心地悪そうに視線をさ迷わせる姿が、やけに近しく感じた。
まるで英雄(ヒーロー)
まるで救世主(メシア)
そんな男が、生身らしい態度を見せたのがやけに嬉しいと思った。


「…仕方ないね」

「?」

「織田作が私にくれた言葉を聞いた分の責任はとってもらわないと。
取り敢えず、ついていってあげるよ」


そう言って、先程まで睨み付けていた手をとった。
一瞬、鏡が目を見開いたように見えたのだが、直ぐに手を引いて、引き寄せられて、其れが錯覚だったのか確かめることができなかった。



「…『ポケットディメンジョン』
まずは此処を出ないと、だな。
もう一度ディメンジョンゲートを使うが、平気か?」


「大丈夫だよ。
行こう、早く織田作を供養してあげないと」


摩訶不思議な抜け道を生む異能の名を呟く鏡のコートに包まれる。
視界を塞ぐ行為に一抹の不安は拭いきれないが、きっとこの男は自分を悪いようにしないだろう、と漠然と思った。
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