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□アマエンボウ
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「‥‥猪里‥‥。」

温め直しても作りたての時と同じぐらい美味しい猿門の料理を平らげ、今は二人ならんで、リビングのソファの上で寛いでいる状態。
普段ならあり得ないような、トロケた表情で猪里の胸元に頬を擦り寄せ、甘えきった姿を見せる猿門。
そんな猿門の、色違いの横髪や綺麗に手入れされた後ろ髪を優しく漉きながら、この時間を愛おしむような表情を見せる猪里。
だが、壁にかかった時計を見た瞬間、その表情は一気に青ざめたものに変わる。

「あァァァァァァァあァっ!!
猿門ワリィっ!!
大事なもん渡すの忘れてたっ!!」

今日の約束に遅れた原因を作った〈それ〉を探すために、ここに来た時に着ていたジャンパーのポケットを光速で探し始める猪里。
二人の時間を邪魔した、猪里が懸命に探しているものに対して少し嫉妬を覚えるも、期待の眼差しでその様子を見つめている猿門。
それと同時に、普段の仕事もこのくらいの早さでやれば、もっと二人でいられる時間増やせるのにな‥と、思っていたことは猿門だけの秘密である。
そうこうしているうちに探していたものが見つかったのか、満面の笑みでソファの上に座り直し、自分の膝の上に、猿門の身体を後ろから抱き閉めるような形で乗せる猪里。
その行動に頭の上に?を大量に飛ばす猿門だが、
「少し目ぇ閉じてろ。」
と、耳元で轟かれれば、その言葉通りに目を閉じる。
目を閉じたことを確認したのか、綺麗にラッピングが施された長方形の箱を開け、中から取り出した銀のネックレスを猿門の首元に付ける。
そして、ネックレスとお揃いの宝石がついた指輪を、迷うことなく猿門の左薬指に嵌める猪里。

「目ぇ‥‥、開けていいぜ?」
「‥‥んっ‥‥。
っ!?猪、里っ‥‥、これ‥‥。」

己の左薬指に嵌まった指輪を見て、困惑の表情を浮かべる猿門。
そんな猿門にキスを一つ落とすと、普段のおちゃらけた雰囲気はどこへやら、真面目な顔つきで猿門を見つめ、

「‥‥俺は猿門が好きだ。
だから‥‥、俺と結婚してくれ。」
「っ!?!?
ッフ‥‥、んだよっ、それ‥‥。
おまっ、反則‥‥。」

グリーンアップルの瞳から大粒の涙をこぼしながら、
「こんなオレでよかったら‥‥、お願いします‥‥。」
と、確かな口調ではっきりと告げた思い。
(ホントは、オレからするつもりだったのに‥‥。)

壁にかかった時計を確認すると、今日が終わるまで残り30秒。
だから、今日しか伝えられない思いを、いや、ずっと前から思い続けて来たことを言いたい。

「猪里っ、オレ‥‥。」
「猿門‥‥。」

絡み合う二人の視線。
今日が終わるまで、3、2、1――。



「「愛してる。」」

そう言って、重なりあう唇。

今日が終わる音がする。
でももう〈今日〉は振り返らないの。
だって、大好きな人がこれからはずっと側にいてくれるから‥‥。

だからどうか、この愛が永遠に続きますように――。




――fin――
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