R.4box

□人間不信と優しい彼
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「‥‥っ‥‥。」
誰も居なくなった南波刑務所3舎看守室。
その看守室の中で、二人静かに寄り添って、ソファの上に座る三葉 キジと、四桜 犬士郎。
甘えるように、キジに身体を預け、桜色の美しい瞳を細めるその姿は、何時もの4舎主任看守部長の姿ではなく、何処にでも居るただの女性の姿。
開け放った窓から室内に吹く風が、優しく、四桜の長い銀髪を揺らす。
その姿に、カナリアイエローの瞳を優しげに細め、トン、トンっ、と、小さな子供をあやすように、小刻みに震える背中をさするキジ。
「また思い出したの?」
「っ‥‥。」
小さく、だが確実に頭を縦に振る。
ギュッ‥、と、知らずの間にキジの看守服を掴み、小刻みに震える身体に力を入れて、何とか震えを止めようとする四桜。
“四桜君、君は何も分かっていないようだね‥‥。”
“君には、拒否権なんて物はないんだよ?”
「いや‥‥、だっ‥‥。」
「犬、大丈夫だから‥‥。」
「いやだ‥‥、いやだっ‥‥、嫌だぁ!!」
耐えきれなくなったのか、桜色の瞳から涙を流し、褐色の肌を伝う汗。
その全てが、トラウマとなっていた記憶を甦らせ、四桜を更なる恐怖へと追い詰めていく。
 

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