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□バレンタインkiss
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2月14日

この日のために、一週間前から試行錯誤を重ねて作り上げたチョコを持って、13舎看守室に足を運ぶ、5舎主任看守部長.悟空 猿門。
何時もオールバックで、後ろへ流しているオレンジ色の髪を今日はそうしていないからか、フワフワとうなじを見え隠れさせている。
それが健康的に焼けた肌と合間って、妖艶なまでの色気を醸し出していた。
また、目の回りに入れている、赤のアイラインを入れていないからか、27歳とは思えない程の、可愛らしさの中に美しさを兼ね備えた顔立ちだと言うことが分かる。
大きなアップルグリーンの瞳を不安気に細め、少し俯きながら歩いているその姿からは、5舎主任看守部長としての佇まいはなく、寧ろ、通りすがった男性達が振り返ってでも見たいと言うような、可憐な雰囲気を醸し出していた。
「‥‥。」
(七夕、喜んでくれっかな‥‥。)
13舎看守室の前に立ち、ゆっくりと息を整える。
チョコを持っていない反対の手を左胸に当てると、ドクン、トクンッ‥と、何時もより早めの鼓動が、手のひらに伝わる。
「‥‥スゥ―‥‥、ハァ‥‥。」
大きく深呼吸をした後、ドアを開けようとノブに手を当てた瞬間‥‥。
「てめぇ‥‥、新入りか?」
「ヒギャァっ!?」
後ろから突然掛けられた、テノールボイスの声。
その声に驚いて、奇声を上げる猿門。
「ビックリさせてんじゃねぇよ、このゴリラハゲっ!!」
‥‥雰囲気が何時もと違っても、中身(七夕以外には)変わらないようだ。
チョコを後ろ手に隠しながら、素頓狂な声を出させた人物を、きつく睨む。
振り返ったその顔に、猿門に後ろから声をかけた人物、13舎主任看守部長.双六 一は、珍しく驚きを隠せないようだ。
「‥‥猿‥‥、か‥‥?」
「だったら何だってんだ!!
いきなり後ろから声かけてんじゃねぇよっ!!」
「すまんっ、何時もと雰囲気が違うからついな‥‥。」
「ふーん‥‥、あっ、七夕居るか?
オレ、アイツに渡したい物があるから、ここに来たんだ。」
「あぁ、アイツなら面会室に居る。
まぁ、今は行かねぇ方が無難だと思うぞ?」
「‥‥?取り合えず、渡すもん渡してくる。
ありがとな、ハジメっ。」
頭の上にクエスチョンマークを飛ばしながら、それでも嬉しそうに、面会室へと向かって走る猿門。
そして、その後ろ姿をジッ‥と、黙って見つめ続けるハジメ。
(それにしても‥‥。)
“ありがとな、ハジメっ。”
(‥‥ヤバイ‥‥。
髪下ろしたらメッチャクチャタイプじゃねえかあのクソザルっ‥‥。)
今までは小生意気なクソザルだった猿門の事を、始めて意識した瞬間。
そして、何で今まで手を出さなかったのかと、後悔の念が膨らんだハジメであった。




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