カゲロウプロジェクト 私の居場所
□第八話
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「…………さん、起きてください。アカネさん!」
「っ……」
耳に入れっぱなしだったイヤホンから流れてくる声に、私はゆっくりと目を開けた。
いつかと同じで部屋はすでに薄暗く、携帯から発せられるぼんやりとした光がやけに眩しい。
目を細めようとすると、瞼のあたりが鈍く痛んだ。
「……あぁ……そうだっけ」
「アカネさん? 起きました?」
昼間の事を思い出しながら、聞こえてくるエネちゃんの言葉にうなづく。
「うん……起きた」
「そのまま起きててくださいよ? 寝ないでくださいね?」
念を押すようにエネちゃんがいい、それっきり音が途切れる。
無音の部屋の中で唯一聞こえるのは私がわずかに呼吸をする音と、時計が秒針を刻む音くらい。
あとはまるで、物音ひとつ――――
コンコンコン
ノックの、音。
カノだ。
「アカネさん、開けてください! 吊り目さんですから、大丈夫です」
イヤホンから再び聞こえたエネちゃんの声。
私は痛む体を引きずってベッドから降り、ドアに近づいた。
鍵に手を伸ばして開けようとし、その腕に無数の青あざがついているのを再確認する。
ダメだ。
今は、会っちゃいけない。