カゲロウプロジェクト 私の居場所

□第七話
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「いっ……」

何とかあの地獄の時間が終わった後。
 私は痛む体を引きずるようにして部屋へと戻ってきた。
 全身が痛くて、ベッドへと倒れこんで動けなくなる。
 ここまで戻ってこれたのも、ある意味で奇跡かもしれない。

「アカネさん! アカネさん!!」

「あー……エネ、ちゃん?」

ポケットに放り込みっぱなしだった携帯から聞こえた声に、私は何とか返事を返す。
 体を何とかあおむけにして、ポケットから携帯を出してベッドに放り出した。
 持って話をする気力などない。
 それに多分、さっきので顔にもかなりの痣ができてしまっている気がするし。
 下手に顔を見せて心配させたくなかった。

「さっきの、大丈夫だったんですか!?」

「平気だってば。ちゃんと頭は守ったし」

私は天井を見上げたまま、小さな声で答える。
 あまり声を出しすぎると誰かがいると勘繰られかねないし、用心するにこしたことはないだろう。

「だったら顔見せてください! それまで安心できません!!」

「そんなに声だしてると、誰かにばれるよ」

お構いなしに声を上げているエネちゃんに私はいい、机の上からイヤホンを取って携帯につなげた。
 これなら最悪、私がついに独り言をしゃべる痛い子になってしまったというだけで済むだろう。



 ……たぶん、だけど。



「アカネさん、お願いします」

「…………」

さっきまでの切羽詰まった感じが少し落ち着いて、切なげなものに変わる。
 エネちゃんも少し頭が冷えたのだろう。

「エネちゃんに顔見せたら、カノに今日は来なくていいって言ってもらえる?」

「……言っても来ますよ、吊り目さん」

私の声色で、きっと状態を察したのだろう。
 エネちゃんの声が、悔しそうだ。

「それは困るかなぁ……何とかして止められない?」


カノにこんな顔見られたくないし。


「無理ですね。観念してください」



 それこそ本当に困る。
 こんな顔を見られたくないのもそうだけど。





 きっと、カノはまた謝るから。
 自分のせいじゃないのに、カノがまた謝るから。
 あの時みたいな、悲しそうなカノの顔なんて見たくない。
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